日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Jp] 加工、製造技術

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 J会場 (2F N207)

座長:井倉 則之(九州大学)、中村 彰宏(茨城大学)、高重 至成(大阪公立大学)

17:15 〜 17:30

[2Jp-09] 内水相のゲル化が濃厚W/O/Wエマルションの流動特性に及ぼす影響

*森 誠1、渡邉 希実1、MAAMOUN IBRAHIM2、椿 俊太郎2、井倉 則之2 (1. 九大・院・生資環、2. 九大・院・農)

キーワード:W/O/Wエマルション、膜乳化、流動特性

【目的】W/O/Wエマルションとは水中油滴型(O/W)エマルションの油滴内に水を分散させた系で、安定性や封入成分の保持率を向上させるために内水相のゲル化が有効と考えられている。一方、W/O/Wエマルションの流動特性は製造工程や食感に寄与するため、その制御が重要である。しかし、分散相体積分率の高い濃厚W/O/Wエマルションでは液滴径の制御が難しく、内水相のゲル化がその流動特性に及ぼす影響の検討は困難であった。本研究では、プレミックス膜乳化法を用いて単分散濃厚W/O/Wエマルションを調製し、内水相のゲル化がその流動特性に及ぼす効果の検証と機構解明を試みた。
【方法】内水相(0~2.50 wt%κ-カラギーナン水溶液)と油相を内水相体積分率が0.30となるように予備乳化し、疎水性SPG膜(Dp=5.0 µm)に圧入し、W/Oエマルションを調製した。W/Oエマルションと外水相を分散相体積分率が0.55~0.75となるように予備乳化した後、Dp=10 µmの親水性SPG膜に圧入し、W/O/Wエマルションを調製した。蛍光顕微鏡観察および液滴径分布測定により、単分散W/O/Wエマルションの形成を確認し、粘度測定を行った。次に、内水相に硫酸第一鉄を封入したW/O/Wエマルションを調製した。最後に、異なる分散相体積分率のW/Oエマルションの粘度比較と内水相ゲルの弾性率測定を行った。
【結果】κ-カラギーナン濃度の増加に伴いW/O/Wエマルション粘度が上昇し、鉄封入時においてもκ-カラギーナンによる内水相のゲル化はW/O/Wエマルション粘度の制御に効果的であった。さらに内水相のゲル化により、鉄の封入効率を向上することができた。κ-カラギーナン濃度の増加に伴う弾性率増加と粘度上昇との相関が認められたことから、内水相の弾性率の増加によりW/O液滴の変形が抑制され、粘度が上昇したと考えられた。