日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Lp] 食品物性

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 L会場 (2F N205)

座長:松川 真吾(東京海洋大学)、太田 尚子(日本大学)、金田 勇(酪農学園大学)

15:00 〜 15:15

[2Lp-01] 水素/重水素交換質量分析を用いたヒト血清アルブミンおよび卵白アルブミンの泡沫表面での構造解析

*鳥巣 哲生1、水口 潤哉1、田之上 凌佑1、榎本 敢太1、内山 進1 (1. 大阪大学大学院工学研究科)

キーワード:タンパク質、泡、質量分析

【目的】タンパク質は界面活性作用をもち、食品産業において泡沫の形成等に利用されている。また、タンパク質が界面で構造変化することよく知られており、界面におけるタンパク質の構造は起泡性に密接に関係している。しかしながら、泡表面の気液界面におけるタンパク質の構造変化について詳細に研究した例はない。本研究では、タンパク質の泡表面での構造と泡沫特性の解明を目指し、水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)を用いた構造解析手法を確立するとともに、モデルタンパク質としてヒト血清アルブミン(HSA)および卵白アルブミン(OVA)の分析を行った。
【方法】タンパク質を重水に溶解した際に起こる水素/重水素交換反応速度は、タンパク質の立体構造や溶媒露出度に依存する。泡状態と溶液状態での水素/重水素交換反応を質量分析法により測定し、に状態間で比較することで、泡状態におけるタンパク質の構造および界面への吸着部位を特定した。HSAについては、消泡後と溶液状態(泡立て前)の構造についても比較した。
【結果】HSAについては、N末端とループ(E492-T506)が吸着部位として同定され、構造変化は構造全体に広くみられた。消泡後の円偏光二色性分光法とHDX-MSによる分析から、泡表面の気液界面における構造変化は可逆的であることが示唆された(Enomoto et al. J Agric Food Chem. 2024)。OVAについては、3つのペプチド(Y107-Y118、I157-A172、F189-M212)が吸着部位と考えられた。一方で、疎水性部位が露出するような界面での構造変化はOVAでは見られなかった。HSA、OVAいずれの吸着部位も疎水性アミノ酸を含み、かつループなど柔軟性のある部位であることから、構造の柔軟性と疎水性の両方が、泡表面の気液界面への吸着にとって重要な因子であると考えられた。