3:30 PM - 3:45 PM
[2Lp-03] Direct observation of rennet milk clotting process by time-resolved USAXS
Keywords:cheese, milk clotting, USAXS, rheology
【目的】チーズ製造における最初のステップである凝乳は乳中のカゼインミセルが凝乳酵素(レンネット)により分散不安定化を起こすことで生じることはタンパク質化学研究で明らかになっているが、数十nmといわれるカゼインミセルの凝集挙動を時分割的に観察した例はほとんどない。本研究では高エネルギーX線を利用した極小角散乱により凝乳挙動の直接観察を試みた。【方法】SPring-8, BL19B2において極小角領域での凝乳過程のナノ構造変化を観察した(課題番号:2022B1776,2023A1688)。サンプルは酪農学園フィールド教育センターで搾乳された生乳と市販のレンネットを使用した。10mm角セルを35℃に保ちながら遠隔操作で凝乳酵素溶液をシリンジポンプで注入できる手製のセルホルダーを用いて凝乳酵素溶液添加直後から30秒毎に120分間連続的に測定を行った。データ解析のqレンジは0.005~0.18nm-1とした。【結果】生乳の散乱プロファイルの0.03nm-1付近にカゼインミセル由来と考えられるショルダーが確認できた。生乳にレンネットを添加すると、このショルダーを不動点として低q側の強度が上がり、低q側の強度が下がっている様子が観察された。この散乱プロファイルにSDF関数を用いて単一粒子系の時間発展挙動を解析した。カゼインミセル(半径50~60nm)はレンネット添加後数10分で凝集によりその見かけ半径が数倍に上昇し、その速度はレンネット濃度に依存することが分かった。これは別途行ったレオメータによるゲル化挙動の反応速度ともほぼ一致している。カゼインミセルの粒子径は生乳を希釈することで可視光の動的光散乱で測定可能であるが牛乳そのままの測定は困難である。高エネルギーX線を用いた極小角散乱測定により凝乳挙動の時分割解析ができたことは極めて意義深いと考えられる。