日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Mp] 食品物性

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 M会場 (2F N203)

座長:藤本 和士(関西大学)、粉川 美踏(筑波大学)、小泉 晴比古(広島大学)

15:30 〜 15:45

[2Mp-03] 冷却速度変化によるひまわりワックスオレオゲルの物性制御

*三上 春菜1、小泉 晴比古1,2、上野 聡1,2 (1. 広大院・統合生命、2. 広大・生生)

キーワード:オレオゲル、ひまわりワックス、冷却速度、レオロジー特性

【目的】1990年代までマーガリンといった加工油脂食品製造には部分水素添加法が用いられてきた.しかし,この製造方法では健康リスクがあるとされるトランス脂肪酸が生成されるため,別の方法が模索されるようになった.そこで現在注目されているのがワックスを用いたオレオゲルである.オレオゲルとは,少量のゲル化剤の作る三次元網目構造が,多量の液状油を包含している半固体状の物質である.しかし,風味の悪さ,材料や作製方法による物性のバラつきといった問題点から未だ実用化には至っていない.食品に応用するためには,より低濃度で安定な物性を持つオレオゲルを作製する必要がある.よって本研究では,低濃度でオレオゲルを作製し,作製過程の冷却速度がオレオゲルの物性に与える影響を解明することを目的とする.
【方法】本研究では,ゲル化剤として精製ひまわりワックス,液状油としてキャノーラ油を用いた.多くの研究では,ワックス濃度を10 wt%前後のオレオゲルを用いているが,本研究では食用として求められている数%以下という基準を満たした低濃度で実験を行った.ひまわりワックスとキャノーラ油を用い,3種類の冷却速度でオレオゲルを作製した.このオレオゲルを針入度測定で硬さを測定し,硬さが変化した要因を結晶サイズ,結晶数,結晶量から考察するために偏光顕微鏡観察,放射光X線回折測定を行った.
【結果】針入度測定の結果では,冷却速度が速くなるほどオレオゲルの硬さが増加することが観察された.そして,この冷却速度による硬さの違いの原因を明らかにするため,偏光顕微鏡観察を行ったところ,冷却速度が速くなるほど結晶サイズは小さく,結晶数は多くなることが分かった.さらに,X線回折測定では,冷却速度が速くなるほど,結晶量が増加していることが観察された.これらの結果より,冷却速度を変えるとひまわりワックスオレオゲルの物性を制御できることが分かった.