日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[2Np] 衛生、殺菌、抗菌

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 N会場 (2F N202)

座長:山木 将悟(北海道大学)、本城 賢一(九州大学)、勝木 淳(熊本大学)

17:45 〜 18:00

[2Np-11] 人工シデロフォア修飾電極を利用した微生物迅速検出技術の開発

*猪股 智彦1、遠藤 卓1、居戸 裕樹1、宮本 政和1、市川 大貴1、杉田 理々香1、小澤 智宏1、増田 英樹2 (1. 名工大・院・工、2. 愛工大・工)

キーワード:人工シデロフォア、微生物検出、修飾電極

【目的】
シデロフォアとは微生物が必須金属イオンであるFeイオンを摂取するために自ら産出する天然のキレート分子である.人工シデロフォアとは天然シデロフォアの機能を模倣した人工分子である.本研究では,構造の異なる人工シデロフォア分子を修飾した電極を用い,迅速かつ選択的に微生物を検出する技術について報告する.

【方法】
鉄イオンを捕捉する部位としてカテコール型,ヒドロキサム酸型,およびそれらを両方含むハイブリッド型の人工シデロフォア分子を設計合成し,それらの鉄イオンとの複合体を電極表面に修飾した.得られた人工シデロフォア修飾電極を用い,各種微生物に対する吸着挙動や迅速検出について,各種顕微鏡測定および電気化学的測定を用いて評価した.

【結果】
構造の異なる人工シデロフォア修飾電極に対して,各種微生物に対する吸着挙動を電子顕微鏡で観察したところ,それぞれの微生物が利用する天然のシデロフォアと類似の構造の人工シデロフォア分子が修飾された電極上に吸着されやすいことが判明した.これはシデロフォアを認識する細胞膜上のタンパク質が類似の構造を有する人工シデロフォア分子を認識して結合していることを示唆している.複数の微生物を混合したサンプルを用いた測定では,電極表面に修飾された人工シデロフォア分子の構造に応じて選択的に微生物が吸着する様子が観測された.また大腸菌を用いた交流インピーダンス測定による検出実験では,培養操作を用いることなく幅広い濃度範囲で大腸菌を迅速に検出可能であることが示された.