日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Ap] フレーバー物質,色素

2024年8月31日(土) 14:15 〜 16:45 A(S2)会場 (3F N321)

座長:中田 勇二(味の素)、島村 裕子(静岡県立大学)、西津 貴久(岐阜大学)

14:45 〜 15:00

[3Ap-03] 代替肉のオフフレーバー抑制技術の開発に向けた大豆タンパク質とヘキサナールの相互作用解析

*山内 美緒1、増田 みゆ2、寺田 祐子1,2、伊藤 圭祐1,2 (1. 静岡県大・食栄、2. 静岡県大・院・薬食)

キーワード:ヘキサナール、代替肉、分子間相互作用、オフフレーバー

【目的】
 近年,環境負荷軽減などの観点から,大豆などを原料とした代替肉の開発が進められている.しかし大豆の加工プロセスでは,脂質酸化によって生成するヘキサナールなどの不快臭成分が残存しやすく,最終製品のオフフレーバーとなりやすい課題がある.そこで本研究では,科学的根拠に基づくオフフレーバー抑制技術の開発を目的として,大豆タンパク質とヘキサナールなどの香気成分の相互作用を分子レベルで解析した.
【方法】
 大豆タンパク質とヘキサナールおよびその類縁体との相互作用を, Bio-Layer Interferometry(BLI)法により解析した.また,個々の大豆タンパク質とヘキサナールの相互作用様式を検討するため,AutoDock vinaによるドッキングシミュレーションを行った.SPME-GC-MSにより, 大豆タンパク溶液からの各香気成分の放散性についても解析した.
【結果】
 大豆タンパク質とヘキサナールの相互作用をBLI法により解析した結果,濃度依存的なレスポンスが検出された.ヘキサナール類縁体との相互作用についても解析したところ,9種類の香気成分(ヘキサン酸, ノナン酸, n-オクタナールなど)においてヘキサナールと同様の濃度依存的なレスポンスが検出された.このことから,大豆タンパク質はアルデヒドだけでなくカルボン酸とも相互作用することが示唆された.ドッキングシミュレーションの結果,ヘキサナールとの相互作用部位は, β-コングリシニンに3箇所, グリシニンに1箇所あることが示唆された. SPME-GC-MSによる分析の結果,BLI法において相互作用が検出された香気成分は,放散性が小さい傾向が見られた.これらの香気成分は大豆タンパク質と相互作用することで,サンプル中に残存しやすいことが示唆された.本研究で検出された大豆タンパク質との分子間相互作用の制御により,オフフレーバー抑制技術の開発が期待できる.