日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Da] 感性評価,官能評価

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 D会場 (3F N324)

座長:舩津 保浩(酪農学園大学)、早川 文代(農業・食品産業技術総合研究機構)、稲熊 隆博(女子栄養大学)

10:00 〜 10:15

[3Da-05] スナック菓子の吸湿による食感劣化に対する咀嚼音の聴覚フィードバック効果

*杉山 妙1、村野 賢博1、土屋 欣也1、佐藤 史明2 (1. 日清オイリオグループ(株)、2. 千葉工業大学・建築学科)

キーワード: 食感、食感劣化、咀嚼音、聴覚フィードバック、クロスモーダル

【目的】
人が食品を食べるときに感じる「おいしさ」は,視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚の五感によって知覚され,総合的に判断されている.また,近年,食品ロス削減に寄与する賞味・消費期限延長に向けて,腐敗だけでなく劣化・変質を防いで作りたての「おいしさ」を持続させるための技術開発が活発になっている.加工食品で出来立ての「おいしさ」を再現する冷凍・保存技術の進化も著しい.いずれも水分(湿気)を制御し,味と香りに加えて食感を損ねないことが重要である.そこで本研究では,食感知覚における“音”の重要性を示すことを目的とし,スナック菓子のパリパリとした食感(クリスプネス)の知覚について,吸湿による食感劣化に対する咀嚼音の聴覚フィードバックの影響を確認した.
【方法】
骨伝導マイクおよびヘッドホンを装着した被験者に対して,集音された骨導音を任意の大きさで気導音として即時呈示できる装置「咀嚼音フィードバック装置」を自作した.成型ポテトチップスの市販品(標準品)と,市販品を用いて調製した吸湿品を試料として,ポテトチップス咀嚼中の骨導音をヘッドホンからフィードバックさせながら食感官能評価を実施した.
【結果】
標準品と吸湿品のいずれも,呈示音量が小さいフィードバック条件間では有意差があるとは言えなかったが,ある程度のフィードバック条件以上から官能評価点数が有意に増加した.また,吸湿品については,被験者が食感劣化を知覚していたものの,呈示音量の増加に伴い基準試料(フィードバックなし,標準品)と同等以上のクリスプネスだと評価する被験者が多く見られた.総じて,ポテトチップスのクリスプネスの知覚は,開封直後の新鮮な状態に限らず吸湿した状態であっても,咀嚼音の聴覚フィードバックに応じて増強されることが確認でき,咀嚼音の増強が食感劣化を補完する効果を持つことも示唆された.