日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

B 食品機能 (Food Function)

[3Ea] 血糖調節、認知機能

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 E会場 (3F N307)

座長:杉山 健二郎(工学院大学)、二宮 和美(群馬大学)、村田 翔太朗(ニップン)

09:30 〜 09:45

[3Ea-03] ヒトにおけるオリーブ果実由来マスリン酸の血糖値上昇抑制効果

*村田 翔太朗1、林 遼太郎1、山内 優輝1、福光 聡1、間 和彦1 (1. 株式会社ニップン)

キーワード:血糖値、オリーブ、トリテルペノイド、マスリン酸、臨床試験

【目的】オリーブ果実に含まれるトリテルペノイドであるマスリン酸は, 筋萎縮抑制,抗炎症,抗酸化などの作用が知られており,ロコモティブシンドロームやさまざまな生活習慣病の予防効果が期待されている.食後血糖値の急激な上昇は動脈硬化のリスク因子であり,血糖値上昇抑制は生活習慣病予防に重要である.マスリン酸は糖尿病モデルマウスの血糖値を低下させることが知られているが,ヒトにおけるその効果は報告されていない.本研究ではヒトにおけるマスリン酸の単回投与が糖負荷後の血糖値上昇抑制に及ぼす影響とそのメカニズムを検証した.【方法】健常な20歳以上60歳未満の日本人成人男女12名を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験を実施した.対象者はトレーランG75g(糖負荷食)とオリーブ果実抽出物(マスリン酸60mg)またはプラセボ食品を摂取し,摂取後0,30,60,120,150,180分の各時点で採血を行い,血糖値を測定した(UMIN000051056). さらにin vitro試験として,マスリン酸およびオリーブ果実抽出物のα-グルコシダーゼ活性阻害作用を評価した.【結果】医師の診断により1名をキーオープン前に解析対象から除外し,解析対象は11名となった.試験食品摂取時の血糖値の最高血中濃度(Cmax)は,プラセボ食品摂取時と比較して有意に低下した(p<0.01).さらにin vitro試験ではマスリン酸およびオリーブ果実抽出物がα-グルコシダーゼの活性を阻害することが確認された.以上の結果より,マスリン酸がα-グルコシダーゼの活性を阻害することにより糖の吸収をおだやかにし,急激な血糖値上昇を抑制することが示唆された.今後,血糖値上昇抑制効果を有する食品としてマスリン酸の利用が期待される.