日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

B 食品機能 (Food Function)

[3Ea] 血糖調節、認知機能

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 E会場 (3F N307)

座長:杉山 健二郎(工学院大学)、二宮 和美(群馬大学)、村田 翔太朗(ニップン)

10:30 〜 10:45

[3Ea-06] NE-4C細胞でのAβ(1-42)誘発機能低下に対するジペプチドTyr-Proの保護効果

*市場 優香1、Lihong Cheng2、江崎 菜々1、松井 利郎2 (1. 九大・院・生資環、2. 九大・院・農)

キーワード:Tyr-Pro、アミロイドβ(1-42)、NE-4C

【目的】当研究室ではジペプチドTyr-Pro(YP)が血液脳関門を透過しマウスの脳実質に蓄積すること, 急性アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいてYPの短期経口摂取が認知機能を改善することを解明してきた1). そこで本研究では, 当該作用がYPのアミロイドβ(1-42)(Aβ)誘発機能低下からの保護によるとの仮説を立て, マウス脳由来神経幹細胞NE-4Cを用いてAβによる神経毒性の誘導とYPによる毒性からの保護効果を評価した.
【方法】NE-4Cはレチノイン酸により神経細胞に分化誘導した. まずAβによる神経毒性誘導の評価系確立のため, 添加時期の検討としてAβ非添加群(vehicle), 分化誘導開始を基準にDay0, 2, 4でのAβ添加群を設け, Day5に細胞生存率測定および神経細胞マーカーであるβ3-tubulinの免疫細胞染色を行った. また濃度検討としてDay2でのAβ 0, 1, 5, 10 µM添加群を設け, Day4に細胞生存率測定を行った. 次に, 確立した神経毒性誘導条件でのYPの保護作用評価として, vehicle群, Aβ添加群, Aβ+YP 20 μM共添加群およびAβとYPの逆配列であるPY 20 μM共添加群を設定し, 細胞生存率を測定した.
【結果】細胞生存率試験において, Day2にAβ 10 µM添加がvehicle群と比較し生存率の有意な低下を確認でき、かつ免疫細胞染色においてDay2群での神経分化が観察されたことから, 本条件を神経毒性誘導条件とした. 次いでYPの保護作用評価の結果, Aβ添加群と比較してAβとYP共添加群の細胞生存率の有意な回復が認められ, これは配列特異的であった. 以上より, YPはAβ誘発機能低下からの保護効果を有すると考えられた.

1) Cheng L. et al. Sci. Rep. 13, 16908 (2023)