日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

B 食品機能 (Food Function)

[3Ep] 整腸作用、脂質調節、コレステロール調節

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 E会場 (3F N307)

座長:志水 元亨(名城大学)、本多 裕之(名古屋大学)、畑中 美咲(アサヒグループ食品)

14:45 〜 15:00

[3Ep-03] パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来細胞壁及びW. coagulans SANK 70258のシンバイオティクス効果の検証- in vitro ヒト糞便腸内細菌叢モデルを用いた検証-

*宮後 元徳1、髙橋 夢月1、畑中 美咲1、田頭 素行1、野田 悠太2、阪本 亜紀子2、山田 良一2 (1. アサヒグループ食品株式会社、2. 三菱ケミカル株式会社)

キーワード:シンバイオティクス、酵母細胞壁、有胞子性乳酸菌、短鎖脂肪酸、フローラ

【目的】酵母細胞壁は,酵母の最外側で細胞を殻のように覆う部分を指し,酵母からエキス分の抽出後に残るもので食物繊維としてβ-グルカン,マンナンを含む.また過去のin vitro試験により,酪酸産生菌の増加や短鎖脂肪酸の増加効果が明らかになっている.一方,W. coagulans SANK 70258は有胞子性乳酸菌で,生きたままで腸に届き,腸内環境を整えることが報告されている.本報告では,パン酵母由来細胞壁及びW. coagulans SANK 70258のシンバイオティクス効果の検証結果を報告する.
【方法】13名の日本人から採取した糞便を培地に懸濁し,①非添加(CON)②W. coagulans SANK 70258(COA)③酵母細胞壁(YCW)④W. coagulans SANK 70258+酵母細胞壁(SYN)を添加して嫌気培養を実施した.培養後,培養液から16S rRNA 菌叢解析および短鎖脂肪酸解析を実施した.
【結果】in vitroヒト糞便培養の結果,短鎖脂肪酸解析について,YCW添加群ではCONと比較しそれぞれ有意な高値を示したが,SYN添加群は更なる酪酸産生の亢進を示した.この理由として、COAの産生する乳酸とYCWが産生する酢酸を材料として酪酸産生が活性化することが考えられた.また,菌叢解析を行い,YCW添加群で増加したBacteroides属や酪酸産生菌であるFaecalibacterium属についてSYN添加群での増殖促進効果が認められた.さらに、YCWまたはCOAの菌叢改変効果の相互作用による酪酸産生の活性化も示唆された.以上より,YCWまたはCOAによる酪酸産生経路が組み合わせにより相補的に促進され,酪酸を効果的に増加させることが見出された.