日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

B 食品機能 (Food Function)

[3Fa] 抗腫瘍、抗炎症、その他食品機能

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 F会場 (3F N306)

座長:宮崎 義之(九州大学)、小暮 更紗(城西大学)、矢部 富雄(岐阜大学)

11:00 〜 11:15

[3Fa-09] かんきつ中間母本農6号の摂取がGKラットの肝線維化に与える影響

*小暮 更紗1,2、安東 千亜季2、齋藤 翔太2、谷岡 由梨2、山内 淳2、古庄 律2 (1. 城西大学、2. 東京農業大学)

キーワード:柑橘、NASH、肝線維化

【目的】かんきつ中間母本農6号(農6)はキングマンダリンと無核紀州の雑種として2001年に登録された品種である。果皮が硬く生食には不向きである一方、果汁が良食味であることから近年、加工用途に利用され始め、栽培面積も増加している。農6の果皮には、脂質代謝改善や抗炎症、発がん抑制作用を示すノビレチン(NOB)が高濃度に含まれている。我々の先行研究において、農6果皮抽出物をヒト肝由来細胞株へ添加したところ、細胞の増殖を抑制することが判明した。そこで本研究では、肝臓がんになる前段階として、NASH(MASH)病態モデル動物を使用し、農6果皮が肝線維化へ与える影響を検証した。 【方法】農6果皮は、熊本県で2021年と2022年の8月、11月に採取されたものを使用した。果皮は凍結乾燥後に粉末化し、NOBを定量した。被験動物はGKラットとし、高脂肪(HF)食によりNASH病態を誘導した。8週齢、雄性、10匹をHF群、HFに農6果皮を添加したN6群の各5匹に群分けした。なお、農6果皮の添加量は、NOB10mg/kg・体重とした。18週齢に麻酔下で全採血により安楽死させた後、肝臓を摘出し、脂質重量や脂質代謝および線維化に関連する遺伝子発現量の解析、組織学的観察などを行った。 【結果】最終体重はHF群とN6群に差はなかった。褐色脂肪重量はHF群0.74g、N6群1.08gとなり、N6群において増加傾向を示した。肝臓中の総脂肪量、中性脂肪量などに差は見られなかった。一方で組織学的観察において、HF群は多数の脂肪大滴による空胞、および線維化が見られたのに対し、N6群は空胞が少なく、線維化も抑制されていた。今回、低容量のNOBで実験を行ったため、肝臓中、血中のパラメータの有意な変化はなかったものの、組織学的解析ではNASHの改善が見られ、N6果皮のゆるやかな脂肪蓄積抑制と肝線維化抑制の効果が示された。