日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

B 食品機能 (Food Function)

[3Ga] 抗腫瘍、抗炎症、抗アレルギー

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 G会場 (3F N305)

座長:米谷 俊(ファーマフーズ)、杉浦 義正(水産大学校)、高杉 美佳子(九州産業大学)

11:15 〜 11:30

[3Ga-10] 卵白アレルゲン(OVA)の経皮感作に及ぼすアルコール消毒の影響

*山本 将揮1、原田 陽平1、日野 こころ2、矢野 えりか1,2、財満 信宏1,2,3、森山 達哉1,2,3 (1. 近大・ 院・農、2. 近大・ 農・応生化、3. 近大アグリ技研)

キーワード:アレルギー、経皮感作、卵白アレルゲン(OVA)、アルコール消毒

【目的】
近年,食物アレルギーの主たる感作経路として,経皮感作が注目されている.この皮膚を介したアレルゲンの侵入と感作は,皮膚バリアの破壊や炎症が関係し,TSLPやTARCなどの炎症や遊走に関わるサイトカインも関与している.コロナ禍以降,除菌のためにアルコール消毒剤を使用する頻度が増加した.その結果,皮膚の過度な脱脂や乾燥を引き起こし,肌荒れなどの健康被害の増加も懸念される.このようなアルコール系消毒剤は,皮膚バリア機能へ悪影響を及ぼす可能性があり,経皮感作による抗体産生や食物アレルギー発症への影響が想定される.本研究では,主要な卵白アレルゲンであるオボルブミン(OVA)を用いて,アルコール消毒が経皮感作にどのような影響を与えるのか,OVAに対するTh2型抗体(IgG1, IgE)の産生を指標に検証し,その機序に関しても検討した.

【方法】
本実験では,アルコール系消毒剤として一般的に使用されている70%イソプロパノールを使用し,6週齢の雌性BALB/cマウスを用いた.週に1回,マウス背部の剃毛後,テープストリッピングと5%SDSの塗布を行った.また,週に4回,剃毛部位に純水またはアルコールを塗布し,乾燥後OVA溶液を曝露した.解析サンプルとして,血清や塗布部の皮膚を採取した.解析項目は,ELISAとウェスタンブロッティングにて血清中のOVA特異的IgG1,IgE抗体の検出,市販のELISA kitを用いて皮膚抽出液中のTSLP,TARCの定量を行った.

【結果】
処置3週間の時点での血清を用い,OVAを固相化したELISAを行ったところ,純水塗布群と比較してアルコール塗布群では,OVA特異的IgG1/IgEレベルともに有意な低値が見られた.従って,アルコール消毒はむしろアレルゲンの経皮感作を抑制しうることが示唆された.今後,その抑制機序に関して検討を進める予定である.