日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[3Jp] 畜産物、乳製品

2024年8月31日(土) 14:30 〜 16:15 J会場 (2F N207)

座長:野口 智弘(東京農業大学)、中村 卓(明治大学)

15:00 〜 15:15

[3Jp-03] 乳酸菌がヨーグルトのカゼインネットワーク構造形成へ与える影響について 〜菌体外多糖類(EPS)の比較〜

*兵頭 璃人1、中村 卓2 (1. 明大・院・農・農化、2. 明大・農・農化)

キーワード:ヨーグルト、フレーバーリリース、テクスチャー、乳酸菌、菌体外多糖類

【目的】
異なるスターター乳酸菌を用いてヨーグルトを作製すると,同じ酸度でも酸味の強さが異なることが知られている.酸味の強いヨーグルトでは,カゼインのネットワーク構造が太く空隙が大きいため,咀嚼時に一気に崩れやすく,風味が拡散しやすい.この構造の差異は発酵過程の後半において発現することを前回報告した1).また,乳酸菌の菌体外多糖(以下EPS)の生産量・質は菌株によって異なり,ヨーグルトに異なるテクスチャーを付与することが知られている.そこで,本研究では,2種類のスターターを用いて発酵過程におけるEPSを比較・分析し,カゼインネットワーク構造形成に差異が生じるメカニズムを解明することを目的とした.

【方法】
異なるスターター(LS:酸味を感じにくい,HS:酸味を感じやすい)を添加した同酸度のヨーグルトを作製した.また,発酵過程のネットワーク構造および発酵後のEPSを電子顕微鏡(SEM)で観察した.さらに,発酵過程のEPS生産量と発酵後のEPSの分子量分布および電荷を分析した.

【結果】
発酵過程の微細構造観察の結果,LS,HS共にpH5.2付近からカゼインネットワーク構造の形成に差異が見られた.また,ネットーワーク中のEPS観察の結果,LS,HS共に菌体周辺に放射状の短鎖EPSが観察された一方で,LSのみネットワークを横断する長鎖EPSが観察された.
発酵後のEPSの分子量分布測定の結果,LSでは高分子EPSが多かった.また,電荷分析の結果,LSでは中性EPSが多かった.さらに,発酵中のEPSはpH5.6以降において生産され,LSがHSより多かった.
以上のように,発酵過程でEPSの生産量に差異が生じ始めた後にカゼインネットワーク構造の形成に差異が生じ始めたことから,EPSの違いが構造形成に影響を与えると考えられた.

1)兵頭ら,日本食品科学工学会第70回大会講演集(2023) p.187