日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Lp] 食品物性

2024年8月31日(土) 14:30 〜 16:30 L会場 (2F N205)

座長:藤井 修治(東洋大学)、小川 剛伸(京都大学)

15:15 〜 15:30

[3Lp-04] 加工食品の赤外吸収特性を利用した
食感の非破壊検査デバイスの開発を目指した基礎検討

*佐世 美帆1、大川 拓樹1、小川 剛伸3、田中 充4、河野 行雄2,1 (1. (地独)神奈川県立産業技術総合研究所、2. 中央大・理工、3. 京大・院・農、4. 九大・院・農)

キーワード:食感、赤外分光、非破壊検査

【目的】食感は美味しさに深く関係し,食品加工産業において食感の評価は重要な課題の一つである.食感は多くの場合,官能評価や機械試験で評価される.官能評価は主観的で,訓練がなければ結果が一貫しづらく,数値化が難しい.機械試験は,サンプルの形状に合わせて測定条件を調整する必要があることや,サンプルを破壊してしまうことから,使用できるシーンが制限される.本研究では,食感を数値化するための,シーンを選ばない非破壊検査デバイスの開発を目指し,基礎検討として分光スペクトルと食感の関係を明らかにする.今回は,化学結合の振動や回転のモードに対応する赤外光の吸収帯が食感の情報を含むと仮定した解析を行った.
【方法】市販の加工食品を用い,赤外吸光測定(島津製作所: IR-Tracer, ATR)とテクスチャー試験(島津製作所: EZ-Test)を行った.パンや菓子類,肉や魚粉,油脂系固形食品やゲル状の食品から基礎データを集め,次の二つの方法で分析した.①成分に対応するピーク強度やその割合から食感を予測するモデルの構築,②多変量解析的アプローチによる,全帯域及びその吸光度比を用いた線形モデルによる回帰.これらの結果から,分光スペクトルとテクスチャーの相関を分析し,仮定の評価を行った.
【結果】一例としてパンや洋菓子は,原材料が類似でも成分比や加工方法により硬さや脆さの違いが様々である.赤外吸収スペクトルでは,成分比や水分量の差異が吸光度の差異として観測されるため,①の方法で炭水化物やたんぱく質量および水分量におおよそ対応する吸光特性を利用すると,硬さなどのテクスチャーと相関を示唆するデータが得られた.②の方法では,テクスチャーと相関する吸収特性が回帰的に示された.総合した知見として,赤外吸収スペクトルから食感の情報を解釈できる可能性があり,赤外光を利用した検査デバイスへの応用が期待できる.