日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Lp] 食品物性

2024年8月31日(土) 14:30 〜 16:30 L会場 (2F N205)

座長:藤井 修治(東洋大学)、小川 剛伸(京都大学)

16:00 〜 16:15

[3Lp-06] 濃厚糖水溶液の水分活性に対する水分率と温度の影響

*伊貝 知紘1、大場 正春2、前林 正弘1 (1. 名城大農、2. 名城大)

キーワード:溶液構造、理想会合モデル、グルコース、フルクトース、粘度

【目的】糖類は、生体ではエネルギー貯蔵や代謝において重要な役割を持ち、食品では甘味や粘稠性、光沢の付与などに利用される化合物として知られている。糖は、多くのヒドロキシ基をもつとともに、複数の異性体として存在できることから、高濃度で水に溶解することができる。糖水溶液の諸物性は、水分率(濃度)だけでなく、温度やその他成分によって大きく変化する。特に高濃度域では僅かな水分率の変化が、粘度や水分活性に大きく影響することが知られており、希薄溶液とは異なる溶液構造の形成などが示唆されるが、高濃度域における糖水溶液の物性を詳細に報告した例は未だ少ない。そこで本研究では、濃厚糖水溶液を対象とし、水分活性に対する水分率や温度の影響を調査した。
【方法】試料は、市販のハチミツと、グルコースとフルクトースの特級試薬である。ハチミツについては、純水を添加して水分率を15~30%に調整した。グルコースとフルクトースの等量混合物の水溶液(モデルハチミツ)についても,同程度の水分率となるように調製した。どちらの試料も均一な濃度とするために60℃で180 rpmの回転数で24時間攪拌し、測定用試料とした。それを密閉容器に封入し、水分活性計(testo社製650型とシスコム社製SCM-TH8、Sensirion社製SHT45)を用いて、20℃~50℃の温度範囲で水分活性が一定になるまで静置してからその値を記録した。市販ハチミツについては,カールフィッシャー水分計を用いて水分率を測定した。
【結果】市販のハチミツとモデルハチミツの両方で、同じ温度では、水分率の増加に伴い水分活性が上昇した。これらの結果に、理想会合モデルを適用して求めた溶質1分子当たりの結合水量は、すべての温度で水分率の増加に伴い減少し、水分率23%付近で周囲の水分率での結合水量よりも僅かに大きくなる傾向を示した。