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[3Ma-05] 厚焼き卵とだし巻き卵の加工法と物性や食感の比較
キーワード:卵焼き、食感、硬さ、柔らかさ、弾力性
【目的】現在、厚焼き卵は東京王子で1648年創業の扇屋ほか、東京築地には大正から昭和初期創業の厚焼き卵専門店がいくつもある。一方、だし巻き卵は明治の終わり頃、京都の卵問屋の店主が卵の有効利用として出汁入りで焼き始めたのが最初で、京都にはその流れを継ぐだし巻き卵専門店が多い。本研究では関東の厚焼き卵と京都のだし巻き卵の加工法や物性や食感を比較し、それぞれの特徴を調べる。【方法】厚焼き卵とだし巻き卵はそれぞれ専門店で購入した。それぞれを2 cm 幅に切って試料とし、断面写真を撮影した。物性測定装置(テキソグラフ:日本食品開発研究所 )で円筒形プランシジャー(断面積0.5 cm2)を用い、降下速度を0.4 mm/秒で破断点測定を行った。得られた圧縮回復曲線から、試料の硬さや柔らかさや弾力性などを表す7つの力学的特性値を算出した。なお、試料の水分含量は105℃、3時間乾燥後の乾燥減量で測定した。【結果・考察】水分含量は厚焼きが59.2%、だし巻きが75.9%で、断面写真から、だし巻き卵の方が内部の均質性が高く、しっとり感があり保水性が優れていた。通常、試料の水分が少ない方が物性的に硬くなるが、両者のF値:破断荷重(gf/cm2)は厚焼きが577±33、だし巻きが603±99と有意差がなかった。だし巻き卵の方が高水分で食感的にも柔らかく弾力性に富むが、破断荷重が厚焼きと変わらないことの考察として、両者の巻き回数の明らかな違いが考えられる。我々はだし巻き卵の巻き回数が多いほど硬くしまり、破断荷重が高くなることを見出している。だし巻きは長方形で縦長の卵焼き器で薄焼き卵を焦がさぬように巻いて焼くのが特徴で、自ずと厚焼き卵より巻き回数が多くなる。したがって、だし巻き卵は水分含量が多くて弾力性に富むが、巻き回数が多く、硬くしまり、破断荷重が大きくなったと思われる。