10:30 AM - 10:55 AM
[SB2-04] Development of a miso production process to make low sodium miso with the flavor of Sendai Miso
Keywords:Sendai miso, salt reduction, taste and aroma evaluation, gas chromatography mass spectrometry (GCMS), headspace gas chromatography(HSGC)
【講演者の紹介】
羽生 幸弘(はにゅう ゆきひろ) 宮城県産業技術総合センター 食品バイオ技術部 主任研究員
略歴:2004年東京理科大学理工学研究科修士課程修了,同年宮城県に入庁(宮城県産業技術総合センター).2021年より現職
研究分野:成分分析,食品加工
世界的に高血圧等の生活習慣病を予防することで医療費を抑制しようとする取組が行われ,我が国においても,厚生労働省が「日本人の食事摂取基準2020年版」にて食塩の1日当たりの摂取量の目標値を男性7.5 g,女性6.5 g未満としている.高齢化が進む中,2003(平成15)年に男性12.8 g/日,女性10.9 g/日だった食塩摂取量(平均)は2019(令和元)年には男性10.9 g/日,女性9.3 g/日と着実に減少しており,消費者の減塩への関心の高さが現れている.食の多様化により,消費量が減少傾向にある味噌業界もこうした消費者ニーズを踏まえ,従来品より50%減塩した商品を上市するなど各社が様々に取組んでいる.また,輸出等も視野にラーメンスープや料理のかくし味等,和食以外への味噌の利用拡大を図る際にも,高い塩分濃度のままでは普及できる範囲が限定される懸念がある.
米味噌を代表するブランドの一つである,本場仙台味噌は,大豆由来のうまみとHEMFに代表される深い香りが特徴である.赤色辛口味噌の代表格として知名度が高く,宮城県の歴史と食文化に根ざした特産品となっている.宮城県でも一部のメーカーで減塩味噌を製造しているが,今日広く行われている減塩味噌の配合は麹歩合を高くするもので,本場仙台味噌と異なる風味となることから,本研究では本場仙台味噌らしい風味を持った減塩味噌の実現を目標に,熟成温度や熟成期間等の管理点を抽出・最適化することにより減塩味噌の製造プロセスを確立した.
初めに,段階的に塩分を低減させた20 kg規模の小仕込試験(8分麹)および水分量を管理点とした同様の試験を行い,仙台味噌に準拠した仕込条件で塩分9%,仕込直後の水分量46%,熟成期間3ヵ月を最適と判断した.次にこの条件による80 kg程度での中規模仕込試験を通常の配合の本場仙台味噌を対照として県内味噌メーカー6社で行い,官能評価および機器分析の結果からいずれの試験区とも対照と同等と評価された.さらに,実製造規模として300 kgでの仕込試験を県内メーカー1社で行い,本場仙台味噌・醤油鑑評会審査員による官能評価で同等以上との評価を受けた.
この製造規模仕込試験の味噌の味,香り,色等の品質の経時変化について賞味期限6ヶ月を想定し調査した.保存温度5℃を対照とした15℃,20℃での保存試験の結果, 4ヵ月時点で20℃では熟成により色の評価で差が見られたものの,15℃では特に大きな変化はなく,1年間品質を保てることを確認した.
本研究により,仙台味噌の特徴である大豆由来のうまみと深い香りを持った通常の配合より25%減塩した味噌の製造プロセスが確立され,この配合で県内メーカーにて製造した減塩味噌が学校給食の材料として利用される事例も出てきている.この研究結果を踏まえて宮城県味噌醤油協同組合では本場仙台味噌ブランドにおける位置付けや取扱いについて検討を進めていることから,今後,お客様の選択の幅が拡がるとともに,味噌の用途拡大につながることが期待される.
羽生 幸弘(はにゅう ゆきひろ) 宮城県産業技術総合センター 食品バイオ技術部 主任研究員
略歴:2004年東京理科大学理工学研究科修士課程修了,同年宮城県に入庁(宮城県産業技術総合センター).2021年より現職
研究分野:成分分析,食品加工
世界的に高血圧等の生活習慣病を予防することで医療費を抑制しようとする取組が行われ,我が国においても,厚生労働省が「日本人の食事摂取基準2020年版」にて食塩の1日当たりの摂取量の目標値を男性7.5 g,女性6.5 g未満としている.高齢化が進む中,2003(平成15)年に男性12.8 g/日,女性10.9 g/日だった食塩摂取量(平均)は2019(令和元)年には男性10.9 g/日,女性9.3 g/日と着実に減少しており,消費者の減塩への関心の高さが現れている.食の多様化により,消費量が減少傾向にある味噌業界もこうした消費者ニーズを踏まえ,従来品より50%減塩した商品を上市するなど各社が様々に取組んでいる.また,輸出等も視野にラーメンスープや料理のかくし味等,和食以外への味噌の利用拡大を図る際にも,高い塩分濃度のままでは普及できる範囲が限定される懸念がある.
米味噌を代表するブランドの一つである,本場仙台味噌は,大豆由来のうまみとHEMFに代表される深い香りが特徴である.赤色辛口味噌の代表格として知名度が高く,宮城県の歴史と食文化に根ざした特産品となっている.宮城県でも一部のメーカーで減塩味噌を製造しているが,今日広く行われている減塩味噌の配合は麹歩合を高くするもので,本場仙台味噌と異なる風味となることから,本研究では本場仙台味噌らしい風味を持った減塩味噌の実現を目標に,熟成温度や熟成期間等の管理点を抽出・最適化することにより減塩味噌の製造プロセスを確立した.
初めに,段階的に塩分を低減させた20 kg規模の小仕込試験(8分麹)および水分量を管理点とした同様の試験を行い,仙台味噌に準拠した仕込条件で塩分9%,仕込直後の水分量46%,熟成期間3ヵ月を最適と判断した.次にこの条件による80 kg程度での中規模仕込試験を通常の配合の本場仙台味噌を対照として県内味噌メーカー6社で行い,官能評価および機器分析の結果からいずれの試験区とも対照と同等と評価された.さらに,実製造規模として300 kgでの仕込試験を県内メーカー1社で行い,本場仙台味噌・醤油鑑評会審査員による官能評価で同等以上との評価を受けた.
この製造規模仕込試験の味噌の味,香り,色等の品質の経時変化について賞味期限6ヶ月を想定し調査した.保存温度5℃を対照とした15℃,20℃での保存試験の結果, 4ヵ月時点で20℃では熟成により色の評価で差が見られたものの,15℃では特に大きな変化はなく,1年間品質を保てることを確認した.
本研究により,仙台味噌の特徴である大豆由来のうまみと深い香りを持った通常の配合より25%減塩した味噌の製造プロセスが確立され,この配合で県内メーカーにて製造した減塩味噌が学校給食の材料として利用される事例も出てきている.この研究結果を踏まえて宮城県味噌醤油協同組合では本場仙台味噌ブランドにおける位置付けや取扱いについて検討を進めていることから,今後,お客様の選択の幅が拡がるとともに,味噌の用途拡大につながることが期待される.