第46回日本集中治療医学会学術集会

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教育講演

[EL15] 教育講演15

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 2:50 PM 第3会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール1)

座長:笹渕 裕介(自治医科大学データサイエンスセンター)

[EL15] 医療統計学の基礎

中村 好一 (自治医科大学 公衆衛生学教室)

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自治医科大学教授(公衆衛生学).福岡県立福岡高等学校卒業,現在の職場に学生として通っていたような記憶がうっすらとある.というよりも,構内にあった学生寮に住んでいたので,「通っていた」という表現には違和感がある.現在はその寮の舎監(学生寮指導主事)をしている.専門は疫学、保健統計学、医事法学など.趣味は読書,旅行、音楽鑑賞(詳細は「基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆」の著者略歴を参照).(基礎から学ぶ楽しい保健統計 著者略歴より)
 統計は(1)記述統計と(2)分析統計に大別することができる。前者は事象を数値でわかりやすく表現する手法であり、後者は確率論を応用して観察された事象が偶然発生したのかどうかを検証するものである。記述統計では「平均」とか「百分率」とか小学校の算数でも出てくる用語が用いられ、分析統計では「t検定」など少なくとも高等学校の数学以降で出てくる用語が用いられるので、分析統計の方が高度の様な気がする。しかし、事象をわかりやすく適切に示す記述統計の方が重要であり、ここから「治療法Aの有効率は50%であったのに対して治療法Bでは70%であった」といったことが判明するのであり、これが偶然に起こった結果なのかどうかは、いわばおまけに過ぎない。「検定はアイスクリームのトッピング」というのは著明な疫学者の言葉である。 記述統計でも分析統計でも、扱う変数が数量データなのか質的データなのかによって手法が異なる。数量データでは代表値(平均、中央値など)とばらつき(分散、標準偏差、四分位数など)を提示し、質的データでは構成割合(通常は百分率)を提示する。2変数間の関連を示す場合にも、「質的データ×質的データ」、「質的データ×数量データ」、「数量データ×数量データ」で手法が異なる。分析統計では検定と推定(95%信頼区間)を用いるが、近年では検定よりも推定の方が好まれる傾向がある(もちろん、検定しか行うことができない場合もある)。検定も推定も変数の性質によって手法が異なるので、適切な手法を用いる必要があるが、それよりも重要なことは検定や推定の考え方の基本であり、これが充分に理解できていれば、後は教科書などに従って適切な手法を選択し、コンピュータのアプリケーション(エクセルやSPSSなど)に任せれば良い。あるいは医療統計の専門家と共同研究を行うという方法もあるが、いずれにしても基本的な原理だけは充分に理解しておいた方が良い。 本講演の聴講で「統計がバリバリと使えるようになる」と期待しないでいただきたい。何を行うにしても座学と実践の融合が重要であり、本講演は座学の入り口とご理解頂きたい。しかし、「統計ってこんな(この程度の)ものか」と言うことが理解できるように準備する所存である。乞うご期待!参考文献中村好一.基礎から学ぶ楽しい保健統計.東京:医学書院,2016.中村好一編著.論文を正しく読み書くためのやさしい統計学 改訂第2版.東京:診断と治療社,2010.中村好一編著.医療系のためのやさしい統計学入門.東京:診断と治療社,2009.