第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL27] 教育講演27

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:25 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:小幡 賢吾(岡山赤十字病院リハビリテーション科)

[EL27] ABCDEFGHバンドル(拡大)からHIバンドル(集約)へ

古賀 雄二 (川崎医療福祉大学 医療福祉学部 保健看護学科)

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2000年大分医科大学看護学科卒業
2005年東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士(前期)課程修了
2014年山口大学大学院医学系研究科博士後期課程修了
九州大学病院、山口大学病院で臨床
2015年亀田医療大学講師
2017年川崎医療福祉大学講師
2018年川崎医療福祉大学准教授
現在に至る。
ABCDEFGHバンドルとは、ABCDEバンドル(毎日の覚醒トライアル、毎日の人工呼吸離脱トライアル、それらのコーディネーション、鎮静・鎮痛薬の選択、せん妄モニタリングとマネジメント、早期離床)をベースとして、家族のチカラの活用(Family engagement)や良好な申し送り(Good handoff communication)やPICS(集中治療後症候群)やPICS-F(家族のPICS)についての書面での情報提供(Handout materials on PICS and PICS-F)などの要素が追加されたケアバンドルである。
ABCDEバンドルは、2010年に敗血症患者をモデルとして示された医原性リスク管理モデルである。そして、ICU患者の予後やQOLを低下させる様々な医原性リスクに対して網羅的に対応し、ICU退室後も中長期的に持続する影響(PICS/PICS-F)にまでケアの枠組みを拡大させた。つまり、管理志向は疾患・症状指向(Disease/Symptom targeted)から患者指向(Patient targeted)、そして患者・家族指向(Patient・Family targeted)へと拡大し、時間軸もICU入室中(クリティカル期)だけでなくICU退室後(ポストクリティカル期)、退院後(ポストクリニカル期)へと延長した。つまり、ICUバンドルケアの10年は、ICUケア概念の包括性拡大の10年であった。
それでは、今後の10年はどこに向かうのであろうか。拡大からの集約である、と考える。繰り返すが、ABCDEバンドルは医原性リスク管理モデルであり、医原性リスクからの解放(Liberation)と患者回復力の促進(Animation)を基本概念としている。つまり、この10年は解放すべき医原性リスクの特定と、医原性リスクの解放策の発展に注力してきたのである。次は、包括的な患者回復力の促進、つまり、生活の再構築を基本概念とした支援を行う必要がある。
そこで、HIバンドル(Holistic interest bundle:全人的関心バンドル)を提唱したい。ABCDEFバンドルに加えて、新たなG・H・Iの要素を加えたい。Gは、信念(God)やGood Death(望ましい死)などの価値観・文化の尊重の要素である。Gは、F(Family:家族)に続いてさらに包括性を拡大し、一族・ムラ・クニ・宗教・社会・文化の価値の尊重である。Hは、そうした要素を含めた概念としての日常性(Home-living environment)の維持であり、その人らしさ(人間性:Humanity)の維持、つまり全人的ケア(Holistic care)である。全人的痛み(total pain:患者の身体的・社会的・精神的・霊的な痛み)に対するケアである。そして、全人的ケアの基盤となるのは、ケア対象者に対する興味・関心(Interest)、つまりI(愛)である。
ABCDEから始まったICUバンドルケアは、解放すべき医原性リスクの要素・概念を拡大し、ケアの方向性は患者生活の再構築を軸(芯)として集約していくであろう。医原性リスクからの解放と患者生活の再構築の促進が、ICUバンドルケアの基本概念(Core of Critical Care)である。