第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育講演

[EL8] 教育講演8

2019年3月1日(金) 14:45 〜 15:25 第19会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール2)

座長:河合 佑亮(藤田保健衛生大学病院看護部)

[EL8] ECMO管理中の早期リハビリテーション ~ECMO患者の明るい未来をめざして~

劉 啓文 (The University of Texas Medical Branch, Galveston)

ライブ配信】【 オンデマンド配信】


image/EL8.jpeg
平成24年3月 東京慈恵会医科大学 卒業
平成24年4月 栃木県済生会宇都宮病院 初期研修医
平成26年4月 前橋赤十字病院 集中治療科救急科 
平成29年10月 救急専門医 取得
平成30年6月 University of Texas Medical Branch現在に至る。

専門分野は集中治療、救急一般。テーマは早期離床、ECMO、心肺停止後症候群など。現在はECMO、敗血症、ARDS、出血性ショックの研究に従事。
Extracorporeal membrane oxygenation (ECMO、膜型人工肺)は、従来の方針では救命が困難とされる患者の命を救えるデバイスとして注目を集めている。2009年CESAR trialでECMOの有用性が報告されて以降、ECMOデバイスの開発、ELSO(ECMO国際学会)によるECMO管理の普及と啓蒙のおかげで、全世界のECMO使用数は10年の間に3倍に増加した。一方で、ECMOによりかろうじて救命された患者は、ECMOを使っていない患者より身体認知機能障害が強く、社会復帰率も低いことがわかった。ECMO患者はその重症度ゆえに、生存後のQOLが著しく低いことがわかったのだ。その現状を打破すべく、ECMO管理中からの早期リハビリテーションが推奨されている。ECMOにはRescueを目的とした治療ECMOと移植までの生命維持を目的とした移植ECMOの2種類ある。日本では移植を目的としたECMOの使用は非常に少なく、また移植ECMOに対するリハビリテーションは多くの海外の報告によりその役割と意義が確立されている。Rescue治療ECMOに対する早期リハビリテーションは未だコンセンサスがなく、各施設で模索的に行っているのが現状である。 治療ECMOにおける早期リハビリテーションの確立には3つのステップがある。1つめのステップは、ECMOの管理に施設全体としてある程度習熟する必要があるだ。治療ECMO患者は、重症度が非常に高く臓器障害合併も多く管理は難しい。また出血などの合併症に見舞われることも多い。管理・看護には多職種の協力も必須である。まずは患者管理、ECMO管理のレベルを上げ、安全性を最大限に高める必要がある。施設内での勉強会、マニュアル作成、シミュレーショントレーニングなどが推奨されている。 2つ目のステップは患者を覚醒させる、Awake ECMOという状態にすることである。ここが最大の障壁と思われる。鎮痛・鎮静の管理、そして水分管理、精神面の管理などへの知識をアップデートし活用する必要がある。 3つ目のステップは患者の選定と安全な早期リハビリテーションの実施である。すべての治療ECMO患者が積極的なリハビリテーションを享受できるわけではない。2ステップのAwake ECMOを超えられない患者も一定数存在する。どのような患者にどこまでリハビリテーションを行うのか、多職種と協同し適切な患者選定および適度なリハビリテーションの提供が安全に行われるためのシステムを作る必要がある。 ECMOのリハビリテーションは難しい。早期というと尚更である。しかし、各施設にあった有効な方法は必ず存在する。共有し、交流することで、日本のECMOの技術は発展し、ECMO患者の命だけでなく未来の生活も救うことができる。