[JPD2-3] 初期治療 輸液と血管作動薬.画一的な対応(one-size-fits-all)でよいか?
循環管理は,敗血症診療の要の1つである.そのため,各ガイドラインは,循環管理に関して,初期輸液療法,心血管作動薬,輸液組成に関する推奨文を提示している.初期輸液療法に関しては,各ガイドラインで「30mL/kg晶質液の投与」という表現が核となっている.しかしながら,近年,大量の初期輸液は転帰悪化と関連することが報告されており,画一的な対応が最善とは言い難い.また小児では,アフリカやインドでのRCTsで,輸液負荷と転帰悪化の関連も報告されている.心血管作動薬に関しては,ノルアドレナリンがfirst lineであり,バソプレッシンなどがsecond lineとして推奨されているが,近年,アンギオジオテンシンII の有効性が報告され,FDA承認に至っており,新たな選択肢として期待されている. 輸液組成に関しては,電解質が調整された晶質液が生理食塩水に比べて腎障害などの合併症を軽減することが最近報告され,今後のガイドラインでアップデートされることが予想される.個々の遺伝的素因は敗血症の転帰と関連することが広く知られているが,循環動態に機能を果たす心血管系遺伝子のβ-2アドレナリン受容体やバソプレッシン分解酵素の遺伝子多型は,敗血症の転帰に影響を与えていることも報告されており,画一的な対応出なく遺伝的素因を加味した対応の必要性も示唆されている.そして,全ての患者に同じ治療を行う「one-size-fits-all」ではなく,「Theranostics」「targeted/personalized/precision medicine」と呼ばれる,ヒトゲノム情報やバイオマーカーや遺伝子発現レベルなどの詳細なデータを用いて,患者を限定して,病態に応じた治療を行う医療確立に向けた研究が必要と考えられている.