第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

ジョイントシンポジウム

[JSY4] ジョイントシンポジウム4
(日本集中治療医学会・日本熱傷学会) 重症熱傷の集中治療

2019年3月2日(土) 10:50 〜 12:20 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:織田 順(東京医科大学 救急・災害医学), 佐々木 淳一(慶應義塾大学医学部救急医学教室)

[JSY4-4] 同種皮膚移植の有用性と日本スキンバンクネットワークの現状と展望

齋藤 大蔵, 仲沢 弘明, 田中 秀治, 上山 昌史, 松村 一, 青木 大, 金城 亜哉, 関 美智子, 山田 知花 (日本スキンバンクネットワーク)

【目的】広範囲熱傷患者の治療において、同種皮膚移植に関するエビデンスを明らかにするとともに、日本スキンバンクネットワーク(JSBN)の現状と展望について呈示する。【方法】Medline等の文献を検索するとともに、JSBNにおける同種皮膚移植術の治療成績を分析して評価した。また、近年のJSBNの現状と展望を示した。【結果】文献上の検索においては、同種皮膚移植による死亡率の低下が示唆され、同種皮膚移植と早期手術を組み合わせることで死亡率の低下、合併症の減少、および入院期間の短縮などの効果が報告されていた。また、2度熱傷創面に対する同種皮膚移植術は、開放療法と比較すると上皮化促進や整容面での改善が示されていた。したがって、文献上、広範囲熱傷患者の治療において、同種皮膚移植の有用性に関するエビデンスが得られた。一方、JSBNの同種凍結皮膚を用いた皮膚移植の治療成績について調査したところ、東京都熱傷救急連絡協議会のデータを用いてBurn Index 40以上の症例で良い結果が得られており、広範囲熱傷患者におけるJSBNの同種凍結皮膚を用いた皮膚移植の生存率改善効果が示唆された。同種皮膚の医学的有用性については、良好な植皮床の作成、浸出液の軽減、あるいは培養皮膚と比べて細菌感染に強いなどの利点もあり、現時点において最も利用価値のある代用皮膚は同種皮膚と考えられる。JSBNは1994年に東京近郊の13施設で東京スキンバンクネットワークとして発足し、同種凍結皮膚のスキンバンクとして全国へと拡大し、2009年には一般社団法人に移行して発展してきた。しかしながら、その道のりは平坦なものではなく、険しいものであったと言わざるを得ない。特に、2015年から2016年の間の1年あまりの活動休止と再開に至るまでには多くの困難があり、JSBN参加施設の先生方に多大なご心配をおかけした。休止期間内に組織としての体制整備と詳細な運用規則等の作成を行い、組織バンクの拠点を東京大学医学部附属病院組織バンクに移して2016年10月から活動を再開し、さらに2018年4月から東京医科大学八王子医療センターに組織バンクを移した。まだ十分な体制が確立できたとはいえないが、2017年4月からはコーディネーター2人体制となって徐々にドネーションの活動範囲を拡げている。広範囲熱傷症例における同種皮膚移植の有用性は明らかであり、本邦における熱傷治療の進歩において、JSBNの存在と果たしてきた役割は測り知れない価値があったと思料する。今後、バンクシステムを維持し、さらなる発展を目指すためには、参加施設のご支援ご協力とともに、学術に基づいた学会による導きが必要不可欠と考える。【結語】同種皮膚移植の有用性に基づくスキンバンクの存続と発展は本邦の熱傷治療の重要事項の一つであり、本シンポジウムにおいても忌憚のないご意見をいただきたい。