[LS18] 急性腎障害における臓器連関と血液浄化療法の可能性
急性腎障害(acute kidney injury: AKI)はICU患者の生命予後を有意に悪化させ、重症AKIにおいては血液浄化療法が生命維持に必須である(dialysis-requiring AKI: AKI-D)。血液浄化療法の技術的進歩は目覚ましく、数多くの施設においてcontinuous hemodiafiltration (CHDF)に代表される急性血液浄化が安全に施行されるようになった。しかし、十分と思われる血液浄化を施行し、いわゆる尿毒症を解除した状況においてもAKI-Dの生命予後は悪く、各国の報告においても死亡率は50%前後と高い。このような知見からAKI-Dを呈する重症多臓器不全においては、単純な腎代替療法としてCHDFには限界があるのではないか、AKIを誘因とした他の臓器障害の惹起・増幅が存在するのではないか、と考えられるに至った。基礎研究においてはAKI動物モデルが腎障害のみならず肺障害や心筋障害を呈していること、腎と他臓器を連関させるものとしてIL-6やHMGB1といった炎症性メディエーターの関与が報告されている。臨床においては吸着性能が高く炎症性メディエーターを効率よく除去することが確認されている新たなフィルターが保険診療にて使用されるようになり、後ろ向き観察研究においては重症症例においては低い死亡率との関連が認められた(Blood Purif. 2017;44(3):184-192)。吸着以外にも新たなメカニズムを用いた血液浄化療法が検討されており、血液浄化療法という技術を用いてAKIにおける臓器連関障害を軽減せしめることが、敗血症・多臓器不全の予後改善に貢献できる可能性があると考える。