第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

教育セミナー(ランチョン)

[LS23] 教育セミナー(ランチョン)23

早期リハビリテーション実践の支援:各種機器の適用意義と有用性

2019年3月2日(土) 12:40 〜 13:40 第19会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール2)

座長:堀部 達也(東京女子医科大学 リハビリテーション部)

共催:アルジョ・ジャパン株式会社

[LS23] 早期リハビリテーション実践の支援:各種機器の適用意義と有用性

神津 玲1,2 (1.長崎大学病院リハビリテーション部, 2.長崎大学大学院医歯薬総合研究科)

 救急・集中治療における早期リハビリテーション,中でも早期離床と早期からの運動(early mobilization, EM)は,その中心的役割を担っている。EMは「身体を動かすこと」の総称であり,ベッド上での他動的,自動的,抵抗的運動,さらには座位,立位,歩行といった身体活動を包含する。EMは「運動負荷」であるが,ICUにおける重症患者に最適な運動の種類,強度,時間(回数),頻度とその考え方については明らかとなっていない点もあり,実際の適用による患者の反応を評価しながら行うことが少なくない。
 一般的に,運動負荷の適用が困難である重症あるいは高リスク患者に対しては,低強度あるいは短時間であっても,高頻度の運動負荷の実施可能性と有効性が示されている。特にICUの重症患者では,EM介入以外の時間をどのように過ごすのか,といった考慮も不可欠であり,EMの強度や時間,種類と同等(あるいはそれ以上)に重要な要素であるかもしれない。そのような意味で,スタッフによるEM実施以外の時間帯での関わり,例えば椅子に座って過ごす,傾斜台で立位となる,ベッド上にて自転車エルゴメータや神経筋電気刺激などの機器を用いて実施するといった,他動あるいは自動運動の適用は大きな意味を持つと言える。
 昨今,救急・集中治療領域における早期リハビリテーションでの使用に特化した機器が開発され,臨床現場で活用され始めている。これらは運動機能の維持や向上を目指した治療的機器と,EMの補助としての介助的機器に大別できる。従来,EMは主にスタッフの人手によって実施されることが多かった。この背景には,早期リハビリテーションにて使用できる機器が少なかったこと,欧米と比較して日本では一般的に患者の体格が小さく,立位や歩行といったEMでもほとんどがマンパワーのみで対応できていたため,各種介助機器を使用するニーズや認識は高くなかったこと,に由来するものと思われる。上記のごとく,これらの機器は,スタッフによるEM実施以外の関わりへの利用,座位や立位,歩行の際の安全性の確保とスタッフの負担軽減などへの活用や応用の可能性は大きい。コストや感染対策,機器の管理といった課題も伴うが,何よりもこのようなEM関連機器の適切な使用は,患者の機能回復の可能性を引き出す上でより効果的であると考える。
 今回の講演では, EM関連機器の使用や適応,その実際と有効性に関して解説し,これからのEMのあり方についても展望したい。