[O104-2] 集中治療を要する重症患者に対するIVCフィルター留置の役割と臨床の実際
【背景と目的】最近のガイドラインの改訂にも反映されているように、近年IVCフィルター(IVC-F)の適応は縮小し、留置例でも可及的速やかな抜去が推奨され、その使用は減少傾向にある。しかし、集中治療患者の中には、肺塞栓(PE)のハイリスク症例をはじめ外傷や周術期等、IVC-Fが必要とされる例が決して少なくない。【目的と方法】2013年からの5年間に当院に三次救急搬送された重症患者6840人のうち、PEないし深部静脈血栓(DVT)の診断で加療を行った145人を対象として、IVC-Fの治療内容および成績について後方視的に検討した。【結果】IVC-F留置は14例(9.7%)に行われ、年齢57±19歳、男6例、女8例、入院時の主病名は内因性疾患9例、外傷5例であった。IVC-F治療が実施された中で、PEは7例(50%)にみられ、うちmassive PEによる心肺停止例が1例(7%)、それ以外のmassive PEが2例(14%)あった。一方、DVTは13例(93%)にみられ、7例は周術期にIVC-Fが留置されていた。また、留置時のD-dimer値は11.8±9.1μg/mlであった。合併症は、位置不良で再留置としたのが1例のみで、留置期間に関しては、永久留置が6例(43%)、一時留置が8例(57%)で、平均留置日数24±7日であった。フィルター回収不能や回収に伴う合併症例はなく、転帰は処置に関係する直接死亡はなく、遠隔死亡が2例のみであった。ガイドラインの改訂前後で適応疾患・基準の変更や、施行頻度の有意な変化は見られなかった。【結語】集中治療室入室患者において、IVC-F留置はPEのハイリスク症例や周術期の予防術目的に安全に実施されており、今後も重要な役目を担うものと考えられた。