[O106-3] Extra corporeal membrane oxygenation (ECMO) 導入後のX線検査で脱血管の変形が判明した2症例
【背景】東洋紡社製のECMO脱血管は多くの脱血孔を有し,より高流量の脱血が得られる反面,陰圧による使用中の変形が報告されている.今回,当施設でECMO導入後にX線検査で脱血管の変形が判明した2症例を経験したので報告する.【臨床経過】1例目は64歳男性で,身長167cm体重85kg.背部痛を主訴に救急要請した.救急車内で意識消失し車内のモニターで心室細動を確認した.来院時も心室細動は継続しており,蘇生術を継続しながらveno‐arterial (V-A) ECMOを導入した.右大腿静脈は非常に深く穿刺に難渋したため,右内頚静脈に東洋紡社製ECMO脱血管を挿入した.ポンプ回転数3600rpm,血液流量は2.0L/minであった.脱血回路の振動や過度の陰圧は認めなかったが,導入から14時間後の胸部X線検査で脱血管の屈曲を確認した.エコーでは脱血管が内頚静脈に到達した直後で屈曲しており,カラードップラーエコーでは屈曲部位に一致して血管内から脱血管内に向かう血流を確認した.脱血管の損傷を疑い,脱血管を慎重に抜去しカットダウンで右大腿静脈からの挿入に切り替えた.切り替え後はポンプ回転数2700rpm,血液流量は2.7L/minとなった.抜去した脱血管は,先端から18cm程のプラスチックの部分が側孔部分で屈曲していた.脱血管は大腿静脈に留置することを想定した長さで作られているため,内頚静脈に挿入した場合にはワイヤー補強されていないプラスチックの部分が血管内に収まりきらない.プラスチック部分には多数の脱血孔が空いているため横方向の力に対して脆弱であり,血管内外の境目で屈曲したものと思われた.2例目は67歳男性で,161cm体重66kg.腹部大動脈瘤破裂に対し人工血管置換術後14日目にARDSのためveno-venous (V-V) ECMOを導入した.右大腿静脈に東洋紡社製ECMO脱血管を挿入した.ポンプ回転数は2500rpm,血流量は3.6L/minであった.導入直後および14日後の腹部X線検査で脱血管の一部に狭窄を疑う変形を認めた.脱血に伴う陰圧過多が原因と考え、ポンプ回転数を2000rpmに下げ(血流量4.3L/min),アルブミン投与により脱血が安定した後にX線検査を再検したところ変形は消失した.その後も脱血不良の際にはX線検査で同様の変形と改善を繰り返したが,可逆性の変形であるため,メーカーに確認の上で使用を継続した.【結論】 ECMO脱血管は陰圧で変形する可能性があるため,X線検査で変形の有無に注意を払うべきである.