第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

患者管理

[O108] 一般演題・口演108
患者管理01

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:45 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:齊藤 洋司(島根大学医学部麻酔科学)

[O108-1] 腹腔内温熱化学療法の術後に輸液量が多いと術後合併症や在院日数が増加する

坂口 友里江1, 松田 修子1, 佐上 祐介1, 北村 倫子1, 齊藤 律子1, 藤林 哲男2, 重見 研司2 (1.福井大学医学部附属病院 集中治療部, 2.福井大学医学部附属病院 麻酔科蘇生科)

【背景】腫瘍減量手術(CRS)と腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は、腹膜に進行した癌や腹膜偽粘液腫等に対して施行される治療法の一つである。全身化学療法と比較して生存率の延長が期待できる一方、手術侵襲が大きく合併症の発生率が高いため、国内では限られた施設でしか行われていない。周術期管理には未だ確立されたものは無く、これまで行われてきた漿質液の大量投与(尿量を指標とした輸液管理)についても未だ議論の余地がある。そこで今回我々は当院におけるCRS/HIPECに対する輸液管理の現状を把握し、術後合併症や在院日数に影響する因子について調べた。【方法】2012年1月から2018年8月までに当院でCRS/HIPECを施行した患者を対象とした。Clavien-Dido分類でGrade3以上の術後合併症を認めた群 (A群)と認めなかった群 (B群)に分類し、周術期の項目について比較した。さらに術後在院日数をアウトカムとして独立したリスク因子を調べた。【結果】対象期間中に当院でCRS/HIPECを施行した患者は62名(A群11名、B群51名)で、年齢60 (Interquartile range, IQR: 46-68)歳、男性42%であった。全員が術後挿管のままICUに入室した。挿管期間は5 (IQR: 4-7)日で、術後在院日数は23 (IQR: 19-34)日、術後30日死亡率は0%であった。A群はB群と比較して有意に手術時間が長く(7.0 (IQR: 6.2-8.7) 時間 vs 5.0 (IQR: 3.7-6.2) 時間, p<0.001)、出血量が多く(27.4 (IQR: 14.6-93.3) ml/kg vs 13.1 (IQR: 4.8-25.2) ml/kg, p=0.006)、結果として術中の総輸液量や輸血量も多かったが (p=0.004, p=0.005)、術中1時間あたりの輸液量に差は無かった (29.0(IQR: 22.0-33.2) ml/kg/h vs 23.8 (17.0-30.7) ml/kg/h, p=0.25)。術直後から術後3日目までの輸液量と尿量はA群で有意に多かったが (p=0.003, p=0.03)、水分バランスには差が無かった (p>0.99)。術後抜管までの日数、ICU滞在日数、在院日数はいずれもA群で有意に長かった (p=0.005, p<0.001, p<0.001)。在院日数をアウトカムとした重回帰分析では、手術時間と術直後から3日目までの輸液量が在院日数延長の独立したリスク因子であった(β=0.31, p=0.019; β=0.32, p=0.014 )。【結論】CRS/HIPECの術後に重篤な合併症を認めた患者は、認めなかった患者と比較して術後の輸液量や尿量が多かった。尿量を指標とした術後の大量輸液は合併症の増加や在院日数の延長を招く可能性が示唆された。