第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄

[O127] 一般演題・口演127
鎮痛・鎮静・せん妄03

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:45 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:吉里 孝子(熊本大学医学部附属病院)

[O127-3] ICU退室3ヶ月後の患者の身体機能と抑うつの関連-前向きコホート研究事後解析-

岩谷 美貴子, 伊藤 真理, 足羽 孝子, 妹尾 育美, 寄高 一磨, 高橋 理恵 (岡山大学病院)

【背景】
ICU退室患者の身体機能障害と抑うつなどの精神的問題の併存の指摘があるが,本邦においては未だその実態は明らかになっていない.
【目的】
ICU退室3ヶ月後の患者の身体機能の実態と抑うつの関連を明らかにすること,さらに,身体機能の関連因子を明らかにすることである.
【方法】
研究デザイン:前向きコホート研究
対象:1施設の2つのICUに48時間以上在室し,挿管・人工呼吸療法を行った成人患者である.中枢神経障害患者,移植後患者,入室時に精神疾患と診断されている患者,ICUから転院した患者は除外した.
主要評価アウトカム:ICU退室3ヶ月後の身体機能
調査方法と内容:ICU退室1~2週間後(T1)に,身体疾患をもつ不安・抑うつ症状を問うHospital Anxiety and Depression Scale(HADS),ストレス対処能力Sense of Coherence(SOC),人口統計学的変数,ICU関連変数を収集した.ICU退室3ヶ月後(T2)に,身体機能を測定するSF-36のphysical function(PF)とHADSを調査した.
【結果】
1.対象者の概要
201名から同意が得られた.年齢は64歳(IQR57.5, 71.0),ICU在室日数は4.6日(IQR3.6, 6.3),人工呼吸器装着期間は14時間(IQR12, 32)であった.141名がICU退室3ヶ月後の調査を完了した(脱落率29.9%).
2.ICU退室3ヶ月後の身体機能の実態と抑うつの関連
PFは80(IQR65,90)であった.ICU退室3ヶ月後にHADS-D≧8の臨床的問題のある抑うつ症状を有す患者52名(36.9%)のPFは70(IQR45,85),HADS<8群のPFは85(IQR75,90)で有意な差を認めた(p<0.001).
3.ICU退室3ヶ月後の身体機能の関連因子
従属変数は先行研究を参考に70で2群したPF,独立変数を年齢・重症度・せん妄発症・抑うつ(T1)・SOCなどとして多変量解析を行った結果,APACHE2が有意に関連した(Adjusted OR1.15, 95%C.I. 1.04-1.27, p=0.007).抑うつ(T1),SOCは影響を与えていなかった.
【結論】
ICU退室3ヶ月後の患者の身体機能は,同時点の抑うつの有無により差があった.身体機能に影響を及ぼした因子はAPACHE2で,ICU退室早期の抑うつやストレス対処能力では予測できなかった.