第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[O131] 一般演題・口演131
鎮痛・鎮静・せん妄 研究05

2019年3月2日(土) 14:50 〜 15:40 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:安藤 有子(関西医科大学附属病院高度救命救急センター)

[O131-2] BPS導入前後における効果と今後の課題

十文字 英雄1, 本田 周司1, 林 千恵美1, 辻口 直紀2 (1.市立函館病院集中治療部 看護師, 2.市立函館病院集中治療部 麻酔科)

〔目的〕 近年、集中治療患者の管理に対しては、J-PADガイドラインで提唱されている痛み・不穏・せん妄の総合的評価が重要視されており、特に人工呼吸器装着患者においてはanalgesia-first sedation(鎮痛優先の鎮静法)が推奨されている。そこで当院集中治療室(以下ICU)では、2016年度からBehavioral Pain Scale(以下BPS)を導入したので、その効果をBPS導入前後で検証し、今後の課題について明らかにすることとした。〔対象・方法〕 対象は、48時間以上の人工呼吸器を要した患者で神経学的予後不良例などは除外した。BPS導入前は看護師が主観的に痛みの評価を行い、医師の指示の範囲でフェンタニルの投与量を調整した。BPS導入後は、看護師が2時間毎と看護ケア時に評価し、BPS が5点以上となる場合にフェンタニルの投与量を調整し、4点を目標にした。今回、対象患者の診療録よりBPS導入前後のAPACHE2score、鎮痛剤の投与量および最大流速、人工呼吸期間、せん妄期間、離床状況を抽出し比較検討を行った。統計処理は、カイ二乗検定、さらに正規性に応じstudent-t検定またはMann-Whitney U検定を行い、有意水準は5%未満とした。〔結果〕 BPS導入前後において、対象79例 vs 89例、 年齢(歳)69.8 vs 71.6(p=0.34)、男女比(人)46:33 vs 44:45(p=0.26) APACHE2score 中央値25 vs 25 (p=0.29)、鎮痛剤投与量(μg/kg/h )中央値 0.34 vs 0.44(p=0.052)、鎮痛剤最大流速(mL/h)中央値3vs4(p=0.0001)、端座位以上の離床状況(例) 2 vs 17(p=0.0007)、人工呼吸期間(日) 中央値5 vs 4(p=0.20)、せん妄期間(日)中央値 5.5 vs 5 (p=0.29)であった。〔考察〕 BPS導入前は、看護師の主観・知識・経験値により痛みの評価が大きく異なる現状であったが、導入後は客観的指標のもと統一された痛みの管理が可能となった。また、人工呼吸期間では有意差を認めなかったが、適切に痛みの管理を実施したことで早期離床が促されたと考えられた。さらにせん妄期間においても有意差を認めなかったが、この原因として痛みの緩和や離床の促進以外にも様々な要因が関係していると考えられた。〔まとめ〕 BPS導入により適切な痛みの管理が可能となり、離床の促進が図れるようになった。今後は、せん妄の発症要因なども検証し、看護ケアに活かしていくことが課題である。