第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

家族支援

[O138] 一般演題・口演138
家族支援

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:45 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:比田井 理恵(千葉県救急医療センター)

[O138-6] 予後不良疾患を抱える思春期小児患者の代理意思決定支援~EOLケアについて家族とともに検討した一事例~

北別府 孝輔 (倉敷中央病院 集中医療センター)

【背景】ICUでは、数か月間をICUで過ごすような予後不良疾患の小児患者(以下:患者)が入室していることがある。そのような症例では、患者に対する治療方針やケア提供について医療者が葛藤を抱えながら患者にとっての最善を検討し続けていることも多い。これらの検討については、2017年に作成された集中治療領域におけるFamily-Centered Careに関するガイドラインが参考になる。今回、総肺静脈還流異常症術後、肺動脈閉鎖、重症肺高血圧により入院している15歳の患者に対して、家族を含めた多職種カンファレンスをおこなうことで患者のエンドオブライフケア(以下:EOLケア)を検討できた事例を経験したため報告する。【目的】予後不良疾患を抱える思春期小児患者のEOLケアについて家族とともに検討した事例を考察する【方法】研究デザイン:事例研究、研究対象者:ICUに長期入室していた思春期小児患者とその家族、研究方法:研究者が介入した場面について電子カルテ記録閲覧により後方視的にデータ収集をおこない、介入内容や結果について文献的考察を行った。本研究は、自施設の看護研究倫理審査会の承認を得ておこなっている。【結果】<生命の危機状態にある患者とその家族に寄り添う>なかで、「家族への危機介入」「患者の苦痛緩和」「アドバンスドケアプランニングの確認」などを行った。<家族を含めた多職種カンファレンスの実施>では、「カンファレンスの趣旨について家族に説明」「カンファレンスの準備を整える」「EOLケアについてコンセンサスを得る」「ツールを用いた思考過程の統一」「ファシリテーションの工夫」などを行った。多職種カンファレンスの結果、現状の情報共有と今後の課題検討がなされ、患者のEOLケアについて家族を含んだ多職種で検討することができた。その後、人工呼吸器を離脱できた患者は院内での卒業式開催やHFNCによる高流量酸素投与下での散髪、医療者と家族との継続したEOLケアの検討が達成された。【結論】患者は根本的な改善が見込めない病態であり、今後不可逆的に進行する可能性は高い。EOLケアの概念や検討の必要性について家族を巻き込んだ多職種カンファレンスで共有できた経験は、今後の治療方針決定に向けた前提を整える意味で重要だったと考える。家族にとって負担でないカンファレンスを検討すること、このようなカンファレンスの適応を検討することなどが今後の課題だと考える。