第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

安全・安楽

[O140] 一般演題・口演140
安全・安楽

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:川口 昌彦(奈良県立医科大学麻酔科)

[O140-4] ICUにおける不眠軽減を目的とした夜間の騒音の実態調査

畑中 菜美, 山中 悠希, 横江 葉名子, 竹中 千恵, 飯田 理恵子, 松本 遼介, 高垣 忍 (京都府立医科大学附属病院 集中治療室)

【背景】Intensive Care Unit:集中治療室(以下ICUとする)の多くの重症患者は入眠困難、中途覚醒などの不眠を呈する。重症患者における不眠は免疫系や呼吸器系、循環器系等に様々な影響をもたらすことが明らかになっている。不眠の原因の一つに騒音が含まれ、特に夜間は推奨されるよりも大きな音が多数発生し、入眠に最適な環境ではないことが指摘されてきた。多くの先行研究により騒音と不眠の関連は明らかとなったが、騒音を特定し、具体的な改善策から患者の不眠解消に至ったとする報告は少ない。
【目的】ICUの夜間の騒音の現状を把握し、不眠を軽減させる介入方法を検討する。
【方法】2017年3月~2018年4月にICUに予定入室する患者を対象に、夜間に騒音計((株)佐藤商事SDT-805L(DT-805L))を使用して、騒音の種類と発生回数、騒音量を30分間測定した。起床後、眠れたか及び気になる音の有無・種類について聞き取り調査を実施した。解析方法:測定した騒音発生回数、平均音量、平均騒音量及び騒音の種類毎の音量の中央値を比較検討した。なお複数の騒音が同時に発生した場合は種類毎の分析は出来なかったため、単独で判別可能な騒音をデータとした。
【結果】研究期間中、予定入室患者463名中73名に騒音測定を実施した。平均騒音発生回数46.9回、平均音量45.1dBであった。平均騒音量は50.7dBで、ゴミ箱の開閉・ベッド操作・パーテーションの移動・ドアの開閉等によるものであった。発生回数が多かった音は医療者の話し声・モニターアラーム・ベッドサイドでの作業音・足音であった。聞き取り調査は、見当識障害やせん妄がなく口頭で意思疎通が図れた54名に実施し、36名が眠れたと答え、34名が気になる音はなかったと答えた。気になる音があったと回答した17名は医療者の話し声や足音等を特定した。眠れなかったと回答した15名中、気になる音があったと回答したのは8名であった。
【結論】夜間を通してICUでは環境省の定める40dB以上の騒音が発生していた。発生回数の多い騒音の大部分は医療者に起因する音であり、対象者が気になった音と一致していた。発生頻度が多かった医療者の話し声・足音・ゴミ箱の開閉・ベッドサイドでの作業音は、医療者の意識次第で改善が望めるものであった。眠れなかったと回答した者のうち半数が気になる音があったと回答したことから、騒音を減らすことで睡眠状況を改善することができる可能性がある。