第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

安全・安楽

[O140] 一般演題・口演140
安全・安楽

2019年3月3日(日) 10:35 〜 11:25 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:川口 昌彦(奈良県立医科大学麻酔科)

[O140-6] Mobile ICUを使用した病院間搬送システムの活用

建部 将夫, 瀬尾 龍太郎, 有吉 孝一 (神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター)

【背景】
専門細分化された高度医療により、重症患者に対する病院間搬送の必要性が増加している。搬送中は人員、医療資源、モニター機器も不十分であり、病院間搬送のトレーニングを受けた医療者も少ない。このような状況下では、たとえ医療者が同乗したとしても患者の状態が悪化したり、機器トラブルが発生した場合に十分な対応ができないことが予想される。よって一般に病院間搬送は極めて危険性の高い行為である。このような危険性を解消するため、当院ではMobile ICUを使用した患者搬送、必要物品のリスト化、搬送に関わるon the job traningによる教育の三点を充実させている。今回、我々は重症呼吸不全患者の病院間搬送の症例を経験したため、それを報告するとともに当院での病院間搬送の取り組みについて紹介する。
【経過】
症例は20歳の女性。血栓性微小血管症に伴う多臓器不全で人工呼吸器管理されているが低酸素血症が進行し、P/F=60程度となりVV-ECMO導入目的に当院への転送依頼があった。患者の状態から可動式人工呼吸器も搭載したMobile ICUによる搬送が必要と判断した。人員は医師3名(内1名はon the job training)、臨床工学技士1名とし、物品はチェックリストに従い準備を行った。可動式人工呼吸器、酸素および空気ボンベ、モニター類を準備し、薬剤としては昇圧薬、鎮静薬、筋弛緩薬を用意した。動静脈ラインは病院間で規格の異なる場合が多いため、すべて入れ替えられるように準備した。転送元の病院に到着し、申し送りを受けた上で搬送に向けての全身管理を行った。まず動静脈ラインを当院の仕様に変換し、鎮静、筋弛緩を行った上で人工呼吸器を持参したものに付け替えた。患者を移動させ始めた時点で酸素化が悪化したため一度病室に戻り、筋弛緩と鎮静を追加投与し全身状態を整えた。その後呼吸状態も安定したため安全に搬送できると判断し、患者をMobile ICUに乗せて当院まで搬送した。搬送中に有害事象は発生せず、患者を安全に当院に搬送することができた。
【結論】
今回我々は当院で取り組んでいる病院間搬送システムを活用することで、人工呼吸器管理下の重症呼吸不全患者を安全に搬送することができた。この取り組みを情報発信することで、安全な病院間搬送についての関心が、今後も益々高まる一助となることを期待する。