第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期

[O144] 一般演題・口演144
終末期04

2019年3月3日(日) 11:25 〜 12:15 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:櫻井 裕教(東京都済生会中央病院麻酔科)

[O144-1] 終末期における代理決定者に指名された際の承諾に影響を与える因子についてのアンケート調査

田村 高志, 柴崎 誠一, 工藤 裕子 (済生会山口総合病院 麻酔科・集中治療部)

【背景】平成30年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を改訂し、「本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要である」と代理決定者について明記された。欧米には法的に認められた代理決定者を選定する権利が認められている国があるが、日本ではまだ法整備がなされていない。【目的】終末期における代理決定者に指名された際の承諾に影響を与える因子を明らかにする。【方法】当院の手術室と集中治療室に関わる職員175名を対象とし、書面で研究の趣旨を説明し質問紙法で調査を行う。【結果】アンケート回収率は98.3%、有効回答率は75.6%であった。家族から代理決定者に指名された場合、指名を受ける人が56%、指名を受けたくない人が4%、誰に指名されたかで対応が異なる人が33%であった。受けたくない人は理由に60%が「家族とはいえ、自分自身ではないので正確に意思を汲む自信がないから」をあげ、「家族の協議で決めたいから」、「本人の事前指示書で十分だから」をあげた人がともに40%であった(複数選択可)。誰に指名されたかで対応が異なると答えた人で指名を受ける可能性が高いのは、実の両親が81%、配偶者が67%であった(複数選択可)。【結論】家族から代理決定者に指名された場合、6割弱の人が指名を受けると答えたが、指名を受けたくないという人が少数ながらいることにも配慮が必要だと考えられる。医療上の決定は自己決定が基本であるが、代理決定を自己決定と見做す法整備がなされると、法的問題はなくなるがそれでいいのだろうか。指名を受ける際、患者のことを代理決定者がよく理解していることが前提となるが、患者の希望と親しい家族による推定が統計的な有意性を持って一致することはないことが示されている。演者らは、自分が終末期になった時の代理決定者の指名についての調査も行ったが、6割の人が指名したいと答えた。これより日本でも代理決定者の法制化が必要と考えられるが、本改訂を端緒に活発な議論を行うことで、様々な問題が表面化すると思われる。終末期医療には、家族のあり方、個人のあり方、医療のあり方、社会のあり方など様々な視点があり、それらは決して独立しているわけではない。議論を通じて、我々の文化、社会にあった終末期医療が実現されることが望まれる。