第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O148] 一般演題・口演148
感染・敗血症 研究08

2019年3月3日(日) 10:45 〜 11:35 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:吉田 拓生(東京慈恵会医科大学麻酔科学講座集中治療部)

[O148-6] ICUにおける抗菌薬使用状況調査-多施設によるパイロットスタディ-

高橋 佳子1, 小林 敦子2,3, 藤谷 茂樹2,4, 石津 智司3, 飛川 昭雄5, 吉井 智子5, 吉川 博6, 中薗 健一7, 竹末 芳生8 (1.兵庫医科大学病院 薬剤部, 2.日本集中治療医学会 感染管理委員会, 3.宝塚市立病院 感染対策室, 4.聖マリアンナ医科大学 救急医学集中治療部, 5.横須賀市立うわまち病院 薬剤部, 6.広島大学病院 薬剤部, 7.聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 薬剤部, 8.兵庫医科大学 感染制御学)

【目的】重症患者や免疫能低下患者が入室するICUにおいて,適切な抗菌薬投与量の設定は感染症治療において重要な役割を担っている。抗菌薬適正使用支援のプロセス評価の1つとして,抗菌薬使用量調査がある。ICUでは,急性腎障害や腎代替療法など特殊病態下で抗菌薬が使用される患者が多く,本邦におけるICUでの日本における抗菌薬使用状況の把握はベンチマーキングの上でも重要である。今回,全国的な多施設共同研究実施の準備段階として,パイロットスタディを行いその問題点について検討した。【方法】ICU入室患者を対象とし,調査期間は2017年4月~2018年3月,抗緑膿菌薬,抗MRSA薬,抗真菌薬のDOT:抗菌薬使用日数days of therapy (DOTs) /100 bed-daysとAUD:抗菌薬使用密度define daily doses (DDDs)/100 bed-daysについて検討した。【結果】調査施設の施設規模と特定集中治療室管理料病床数/救命救急入院料病床数は,施設A,B,Cは≧500床で各々14/0床,6/20床,0/10床であった。施設D,Eは<500床で,各々8/24床,4/0床であった。在院患者延べ数で施設間の差を調整したDOTは,抗緑膿菌薬では各々62.8,58.3,27.7,19.7,5.2,抗MRSA薬は22.8,10.8,7.3,13.1,1.1,抗真菌薬は13.5,28.5,1.3,3.6,0と施設間でかなり異なった。また,AUDと比較し,抗緑膿菌薬のDOTは全施設高値を認めた。一方,抗MRSA薬は2施設が低値,3施設は差を認めず,抗真菌薬は2施設で大きな差をもって低値,残りの3施設は使用頻度自体が少なく差も軽微で評価困難であった。【結語】ICUにおけるAUDまたはDOTはいずれも施設間で大きなばらつきを認めた。これには入室対象とする患者背景が大きく関与していることが推察され,多施設共同サーベイランスを行うにあたり,対象患者の特徴により施設を分類して調査する必要性が示された。AUDによる調査において,抗緑膿菌薬は過小評価に,抗MRSA薬と抗真菌薬では,特に規模大きい病院では過大評価となる可能性が示唆された。DOTとAUDの差は抗菌薬の種類により一定でなく,腎機能低下や腎代替療法を導入する患者が多いICUにおいて,抗菌薬の減量が反映できるDOTが抗菌薬投与量調査の指標として適していると考えられた。