第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[O2] 一般演題・口演2
鎮痛・鎮静・せん妄 研究02

2019年3月1日(金) 11:25 〜 12:15 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:鶴田 良介(山口大学医学部附属病院先進救急医療センター)

[O2-3] PICUにおける乳幼児の薬剤離脱症候群の検討:J-PADガイドライン導入にむけて

荻原 重俊, 宇川 麻里恵, 堀川 慎二郎, 秋山 類, 小谷 匡史, 居石 崇志, 齊藤 修, 清水 直樹 (東京都立小児総合医療センター 救命集中治療部 集中治療科)

【緒言】集中治療中の鎮静薬や麻薬は医原性離脱症候群(Iatrogenic withdrawal syndrome: IWS)の原因となりうる。特に乳幼児での発生頻度は成人よりも多いと報告されており、その危険因子の解明と発症予防は重要な課題である。小児領域では包括的な鎮静鎮痛管理が十分普及しているとは言えないが、当院ではより質の高いPICU管理を目指して、各種臨床スコアの導入、チェックリスト、薬剤選択や鎮静漸減プロトコール等に取り組んできた。今回我々は当院PICUでの乳幼児のIWS発症因子を検討し、乳幼児に対してのJ-PADガイドライン導入への取り組みを検証する。【方法】2017年4月から2018年3月までの12ヶ月間で当院PICUに入室した患者で5日間以上の人工呼吸期間を要した症例を対象とし、診療録を元に後方視的に検討した。生後4週未満および6歳以上、30日以上の人工呼吸期間、気管切開症例、死亡症例を除外基準とした。IWSの診断はWAT-1を使用した。危険因子として年齢、性別、入室理由、入室前の機能障害(PCPC)、人工呼吸期間、麻薬および鎮静薬の種類と投与量を検討した。【結果】該当期間のPICU入室患者724例のうち、5日間以上の人工呼吸を要した症例は170例であり、そのうち上記基準を満たす症例は88例であった。IWS発症は8例(9.0%)であり、その内訳は心臓血管外科術後3例、先天性気管狭窄2例、その他3例であった。年齢中央値は1歳1ヶ月(4ヶ月-5歳5ヶ月)、IWS発症までの人工呼吸期間の中央値は10日間(5-31日間)、IWSの被偽薬としてはmidazolam 5例、dexmedetomidine 3例、morphine 3例、fentanyl 1例であった。IWS群は非IWS群に比べて人工呼吸期間及びICU滞在日数が有意に長かった(p<0.05)。ROC曲線から求めた最適カットオフ値である人工呼吸期間10日をもちいると感度0.75、特異度0.63でIWSを予測できた。【考察】本研究ではIWSの発症率が過去の報告と同等かやや低い傾向にあり、IWS発症は長い人工呼吸期間と関連を認めた。またIWS症例の38%でdexmedetomidineとの関連が疑われた。IWS予防のため、長期鎮静患者に対しての鎮静漸減方法の工夫が望まれる。