第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

外傷・熱傷 研究

[O25] 一般演題・口演25
外傷・熱傷 研究02

2019年3月1日(金) 17:50 〜 18:30 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:川副 友(東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 救急医学分野)

[O25-5] 高エネルギー外傷後の経過観察入院の必要性に関する考察

本木 麻衣子, 園生 智弘, 島田 敦, 中村 仁美, 神田 直樹, 奈良場 啓, 高橋 雄治, 橋本 英樹, 中村 謙介 (日立総合病院 救急集中治療科)

【背景】外傷における緊急度・重症度を判断する指標として、受傷機転の情報は生理学的徴候の把握、損傷の解剖学的な観察に次いで重要であり、それのみで重症度を予測しうることが示されている。当院では、外傷患者のうち、ISS<15点と解剖学的評価において重症でないと判断された症例においても、高エネルギーな受傷機転から重症化が予測された場合は、経過観察入院を推奨している。そのような患者において、入院後に新規の外傷が判明、もしくは追加治療を要した症例の割合に関して調査したので報告する。【対象と方法】対象は2017年3月以降に当科を受診した外傷患者のうち、受傷機転が高エネルギーであり、かつISS<15点と解剖学的評価における重症度が低く、経過観察目的に入院した患者135例である。受傷原因は、交通事故:96例、墜落・転落:36例、その他:3、ISSは4.49(0-14)であった。入院翌日に帰宅したものは58%(78例)であった。入院後に新規の外傷が指摘された症例は0例であり、また追加治療を要した症例も0例であった。【考察】高エネルギーな受傷機転は重症化の予測因子とされているが、初療時に解剖学的な重症度が低いと判断された症例に限っては、経過観察期間中に重症化した症例の割合は0%であった。この結果からは、このような患者における経過観察入院は機能・生命予後には必ずしも影響していない可能性が考えられた。特に、高齢者においては入院そのものが臥床や各種合併症のリスクとなりうるため、経過観察入院の適応に関しては慎重な検討が必要であると思われた。