第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

消化管・肝・腎 症例

[O29] 一般演題・口演29
消化管・肝・腎 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:20 AM - 12:20 PM 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:遠藤 彰(東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター)

[O29-6] 軽症脳血管障害にもかかわらず重症クラッシュ症候群を合併した一例

秋田 真代, 内田 桃子, 路 昭遠, 亀田 徹, 藤田 正人 (安曇野赤十字病院 救急部)

【背景】クラッシュ症候群は瓦礫や家具など外力による圧挫のほか自重による圧挫でも発症することが報告されているが、病歴不明の場合に疑うことは困難である。救急搬送後に進行する高カリウム血症から病歴を再評価し、クラッシュ症候群と診断して救命しえた軽症脳血管障害の症例を経験したので報告する。【臨床経過】71歳男性。既往は糖尿病、脂質異常症、脳梗塞。日常生活動作は自立しており独居であった。最終確認から3日後に自宅内で倒れているところを発見され、ドクターヘリ医師による病院前医療介入のもと重症脳血管障害疑いとして救急搬送された。来院時ショック状態であり、意識レベルはGCS E1V1M4で瞳孔は右4mm、左6mmと左右差があり四肢は左上肢のみ自発的な体動がみられた。頭部CTでは軽度の左視床出血を認めたが、ショックの原因となるような重篤な異常所見は認めなかった。血液検査で血清カリウム値が7.0mEq/Lと高値でありCKも著明高値であったため横紋筋融解症を疑い急速輸液及びGI療法を開始したが、数時間の経過で血清カリウム値はさらに上昇し8.4mEq/Lとなった。心電図もワイドQRSとなったため持続的血液透析を導入した。改めて発見時の状況を第一発見者及び救急隊に確認すると、室内で胡坐をかいて前方にうなだれて顔面を床につけたまま意識障害を呈しており、病着約1時間前救急隊接触後に仰臥位にされ心肺蘇生を試みたとのことであった。来院時下肢の明らかな腫脹や発赤は認めなかったが、右頬部、胸部、両上前腸骨棘周囲、両下腿外側に褥瘡がみられ、胡坐で前屈したまま数日経過していた可能性が示唆された。これらの経過から、長時間にわたる股関節屈曲が解除されたことにより発症したクラッシュ症候群と診断した。持続透析導入後血清カリウム値は速やかに低下した。CKは入院3日目に141500 IU/Lまで増加した後減少に転じ、入院13日目に正常化した。急性腎障害については徐々に改善し、間欠的透析に移行後入院25日目に透析から完全離脱した。意識レベルはGCS E4V4M6まで改善したが両下肢麻痺は残存したまま入院74日目に療養型病院へ転院した。【結論】救急搬送時は一般に仰臥位とされている場合が多い。長時間にわたり体動困難となっていた場合には病歴や搬送前の状況を詳細に確認し、特異な姿勢をとっていたときにはクラッシュ症候群発症の可能性も考慮し経過を観察する必要がある。