第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 症例

[O34] 一般演題・口演34
循環 症例01

2019年3月1日(金) 09:00 〜 10:00 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:櫻谷 正明(広島県厚生農業協同組合連合会廣島総合病院(JA広島総合病院)救急・集中治療科)

[O34-7] 迅速な診断と治療方針決定によって救命し得た急性心筋梗塞後左室自由壁破裂による院外心停止の一例

川上 将司1, 稲永 慶太1, 堤 孝樹1, 河野 俊一1, 今村 義浩1, 安達 普至2, 内田 孝之3, 井上 修二朗1 (1.飯塚病院 循環器内科, 2.飯塚病院 集中治療部, 3.飯塚病院 心臓血管外科)

[背景] 急性心筋梗塞は心原性心停止の原因として頻度が高く、ST上昇が続く場合は心停止後であっても原則primary PCIが考慮される。可及的速やかに再灌流を達成することが救命に不可欠である一方で、心停止後昏睡状態にある患者からは十分な病歴聴取や意思確認ができないこと、また外科的介入が必要な機械的合併症の存在は治療方針転換が必要となることから、我々は迅速に機械的合併症の有無を診断し、適切な治療法を選択しなければならない。機械的合併症の一つである左室自由壁破裂は、発症率は約2%と近年減少傾向にあるが依然として死亡率は高く、外科手術の前の補助循環導入や心嚢ドレナージは施設の治療体制も考慮して症例毎に選択されているのが現状である。[症例経過] 70代男性。屋外で仕事中に卒倒。救急隊がPEAを確認し、17分のCPRによって自己心拍再開を得た。ドクターカーの医師がカテコラミンを開始し、下側壁誘導のST上昇を認識し病院前でカテーテルチームを起動した。しかし来院後エコーにて中等量の心嚢液貯留を認めたため、CTで大動脈解離を否定、心嚢液は血性CT値であり、左室自由壁破裂を疑った。カテコラミン投与下で血圧は維持され、血性心嚢液は穿刺吸引できない可能性も高いと判断し、心嚢ドレナージを行わずIABP挿入、冠動脈造影で回旋枝閉塞を確認した。開胸下に左室後壁に5cmの破裂孔を確認し修復術を施行。なお、来院時CK 320、CKMB 40、LDH 1078IU/Lであり、発症から数日経過した心筋梗塞であると推測され、後に来院した家族から3日前に胸痛があったことを聴取した。体温管理を含めた集学的治療によって神経学的後遺症を残さず第25病日に自宅退院した。[結論] ST上昇型心筋梗塞が疑われたが、画像検査から血性心嚢液が示唆され、心筋マーカーより発症から数日経過した急性下側壁心筋梗塞による左室自由壁破裂と診断、IABP補助下に外科的止血術を行った症例を経験した。迅速な初期診断と適切な治療選択によって救急医・集中治療医・ハートチームで救命し得た症例を報告する。