[O41-2] 脊椎・脊髄損傷患者における静脈血栓塞栓症の検討
【背景】脊椎・脊髄損傷では長期にわたる入院および安静加療が必要となることから静脈血栓塞栓症(Venous Thromboembolism, VTE)を発症しやすい。しかしVTEに対するスクリーニング法や画像検査による確定診断のタイミングについてはまだ確立していない。【目的】長期の入院・安静加療を要した脊椎・脊髄損傷患者において、当院におけるVTE診断の現状とVTE患者の特徴を明らかにする。【方法】2011年4月から2018年5月までの間に当院に搬送された脊椎・脊髄損傷患者のうち、10日以上の安静加療を必要としたものを対象とした。診療録より血漿Dダイマー値の推移、画像診断の有無等について後方視的に検討した。画像検索の有無で検査群と未検査群の2群に分類し、さらに検査群のうち確定診断された症例をVTE群、されなかった症例をnon-VTE群の2群に分類した。【結果】73例の脊椎・脊髄損傷患者うち、来院時CPA (7例)と入院10日未満(11例)の症例を除外し55例を対象とした。年齢の中央値は64 (56-70)歳で、41例(75%)が男性であった。VTEの画像検索として下肢静脈エコーまたは造影CTは23例(42%)に施行されており、そのうち11例にVTE発症を認めた。検査群と未検査群の比較において、患者背景では検査群で有意に女性が多く、ISS (Injury Severity Index)が高く、脊椎固定術施行率が高かった。また検査群では第5病日以降のDダイマー最高値が有意に高かった。予防的抗凝固薬投与やステロイド投与、出血性病変合併は両群間で有意差を認めなかった。VTE群とnon-VTE群の比較では、患者背景、第5病日以降のDダイマー最高値、予防的抗凝固薬投与やステロイド投与、出血性病変合併のいずれの項目でも有意差を認めなかったが、Dダイマー中央値の推移についてVTE群、non-VTE群ともに第10病日まではほぼ同様の推移をたどるものの、VTE群においてはその後、急激な上昇傾向を認め第13病日にピークを迎えた。またVTE群において画像検索のタイミングの中央値は第12病日であり、Dダイマー中央値のピークとほぼ一致していた。【結論】当院では脊椎・脊髄損傷患者に対し女性・ISS高値・手術施行・Dダイマー高値をVTE発症の危険因子と考えVTE画像検索を行っていた。また脊椎・脊髄損傷患者においてはDダイマー値をフォローし、受傷後2週間頃に再上昇を認める症例ではVTE発症の可能性が考えられるため、下肢静脈エコー等にてVTE検索を積極的に行う必要がある。