第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液・凝固 研究

[O41] 一般演題・口演41
血液・凝固 研究01

2019年3月1日(金) 17:10 〜 18:00 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:江口 豊(滋賀医科大学医学部救急集中治療医学講座)

[O41-4] ICU入室時のtotal iron binding capacityは重症患者の輸血必要性の予測に有用である

今枝 太郎1,2, 中田 孝明1, 安部 隆三1, 織田 成人1 (1.千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学, 2.成田赤十字病院 救急集中治療科)

【目的】集中治療室(ICU)に入室する重症患者は、しばしば貧血に陥り輸血を要するが、ICU患者に対する輸血は転帰の悪化と関連する。よって、重症患者において貧血および輸血を防ぐべく、より早期に輸血必要性を予測しうる貧血関連マーカーを検討した。【方法】ICU入室後48時間以上の滞在が見込まれ、20歳以上で臓器障害がある非出血性症例を対象とした前向き研究。Derivation cohortにおいてHemoglobin、鉄、total iron binding capacity(TIBC)、トランスフェリン、トランスフェリン飽和度、フェリチン、エリスロポエチン、葉酸、Vitamin B 12 、アルブミン、Interleukin-6(IL-6)、Creatinineの血中濃度を入室時、以後1週間毎に第28病日まで測定した。またValidation cohortにおいて、入室時TIBC、IL-6、Hepcidinを測定した。主要評価項目は入室後28日以内の輸血施行の予測能、副次的評価項目は貧血関連マーカーの経時的変化、および入室後28日までの採血量とした。【結果・考察】Derivation cohortは121人で、入室後28日以内に赤血球輸血を施行した輸血群は53人、非輸血患者は68人。両群間において年齢、性別に有意差は認めなかったが、入室時SOFAスコア、敗血症、および一般病棟からのICU入室の割合は輸血群において高値であった。輸血必要性の予測能は入室時TIBCが最も高く(AUC 0.835[95%信頼区間=0.765-0.906])、cut-off値234.5μg/dLで、感度、特異度は0.906、0.632であった。また、入室時SOFAスコア、敗血症、および一般病棟からのICU入室等の背景を調整した多変量解析において入室時TIBC低値は輸血施行の独立因子であった(P<0.001)。Validation cohort(n=54, 輸血群18人, 非輸血群36人)における入室時TIBCの輸血施行の予測能は、感度0.888、特異度0.694であった。次に、ICU貧血には炎症による鉄利用能低下が関与していると考え測定したIL-6(pg/mL)は両群間で有意差はなかった(P=0.07)が、全患者においては輸血群で高値(546.7[157.6-4957.0] vs 161.2[50.3-759.8], P=0.0014)であり、Hepcidin(ng/mL)は輸血群で高値(169.2[62.2-295.8] vs 62.3[22.7-121.2], P=0.014)であった。また輸血群においてTIBC、トランスフェリン、アルブミンは有意差をもって低値を推移し、採血量(mL/day)は輸血群で多かった(21.7±10.4 vs 15.1±7.2, P=0.0003)。【結論】ICU入室時のTIBC低値は28日以内の輸血必要性の予測に有用である。