第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液・凝固 研究

[O42] 一般演題・口演42
血液・凝固 研究02

2019年3月1日(金) 18:00 〜 18:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:小川 覚(京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室)

[O42-4] 急性心筋梗塞と胸部大動脈解離の鑑別に有用な凝固マーカーの検討

入江 悠平, 星野 耕大, 村西 謙太郎, 杉村 朋子, 中塩 舞衣子, 川野 恭雅, 喜多村 泰輔, 石倉 宏恭 (福岡大学 医学部 救急医学講座)

背景:胸部大動脈解離 Stanford A(以下AD)の特徴的な主訴は胸痛・背部痛であり、しばしば急性心筋梗塞(以下AMI)との鑑別が必要となる。AD診断にD-dimerがAMIとの鑑別に有用との報告が散見されるが、二者間の凝固/線溶系マーカーを詳細に検討した報告はない。そこで今回我々はAMIとAD患者の凝固/線溶系マーカーを測定し、その特徴を検討した。対象と方法:対象は2015年4月~2018年3月の間に当センターへ搬入され、入院時にAMIもしくはADと診断した20歳以上の患者である。このうち、搬入24時間以内死亡、胸部大動脈瘤破裂併発患者は対象から除外した。これら患者の搬入時PT、APTT、TAT、アンチトロンビン(AT)、FDP、D-dimer、PIC、SF、トロンボモジュリン(TM)、活性化プロテインC(aPC)を測定した。結果:検討症例はAMIが71人、ADが50人であった。2群間における患者背景では年齢、既往歴、生活歴に差は認めず、AMIで男性の比率が有意に高かった(79.2% vs 46.8%, p=0.001)。線溶系マーカーはFDP (4 vs 44μg/mL, P<.001)、D-dimer (0.8 vs 4.2μg/mL, P<.001)、PIC (1 vs 3.4μg/mL, P<.001)、凝固マーカーはTAT (2.3 vs 23.1 ng/mL, P<.001)、SF (3 vs 15.5μg/mL, P<.001)がADで有意に高値であった。次にROC解析を用いてADの有無を評価したところ、FDPのAUC=0.87 (感度:0.83 特異度:0.80, cut-off値:9.0μg/mL)、D-dimerはAUC=0.85 (感度:0.83、特異度:0.79 cut-off値:3.7μg/mL)であった。凝固系マーカーではTATはAUC=0.81 (感度:0.81、特異度:0.71 cut-off値:12.5ng/mL)、SFはAUC=0.79(感度:0.77、特異度:0.73 cut-off値:15.5μg/mL)であった。結語:今回の検討からADとAMIの鑑別には、線溶系マーカー以外に凝固系マーカーのTATも有用なマーカーとなる可能性が示唆された。