[O42-4] 急性心筋梗塞と胸部大動脈解離の鑑別に有用な凝固マーカーの検討
背景:胸部大動脈解離 Stanford A(以下AD)の特徴的な主訴は胸痛・背部痛であり、しばしば急性心筋梗塞(以下AMI)との鑑別が必要となる。AD診断にD-dimerがAMIとの鑑別に有用との報告が散見されるが、二者間の凝固/線溶系マーカーを詳細に検討した報告はない。そこで今回我々はAMIとAD患者の凝固/線溶系マーカーを測定し、その特徴を検討した。対象と方法:対象は2015年4月~2018年3月の間に当センターへ搬入され、入院時にAMIもしくはADと診断した20歳以上の患者である。このうち、搬入24時間以内死亡、胸部大動脈瘤破裂併発患者は対象から除外した。これら患者の搬入時PT、APTT、TAT、アンチトロンビン(AT)、FDP、D-dimer、PIC、SF、トロンボモジュリン(TM)、活性化プロテインC(aPC)を測定した。結果:検討症例はAMIが71人、ADが50人であった。2群間における患者背景では年齢、既往歴、生活歴に差は認めず、AMIで男性の比率が有意に高かった(79.2% vs 46.8%, p=0.001)。線溶系マーカーはFDP (4 vs 44μg/mL, P<.001)、D-dimer (0.8 vs 4.2μg/mL, P<.001)、PIC (1 vs 3.4μg/mL, P<.001)、凝固マーカーはTAT (2.3 vs 23.1 ng/mL, P<.001)、SF (3 vs 15.5μg/mL, P<.001)がADで有意に高値であった。次にROC解析を用いてADの有無を評価したところ、FDPのAUC=0.87 (感度:0.83 特異度:0.80, cut-off値:9.0μg/mL)、D-dimerはAUC=0.85 (感度:0.83、特異度:0.79 cut-off値:3.7μg/mL)であった。凝固系マーカーではTATはAUC=0.81 (感度:0.81、特異度:0.71 cut-off値:12.5ng/mL)、SFはAUC=0.79(感度:0.77、特異度:0.73 cut-off値:15.5μg/mL)であった。結語:今回の検討からADとAMIの鑑別には、線溶系マーカー以外に凝固系マーカーのTATも有用なマーカーとなる可能性が示唆された。