第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

血液・凝固 研究

[O42] 一般演題・口演42
血液・凝固 研究02

2019年3月1日(金) 18:00 〜 18:50 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:小川 覚(京都府立医科大学大学院医学研究科 麻酔科学教室)

[O42-6] 血管内皮細胞障害に伴う凝固活性化を評価するためのin vitroモデルの構築

此内 緑1, 伊藤 隆史1,2,3, 上國料 千夏1, 安田 智嗣1,3, 垣花 泰之1,3 (1.鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 救急集中治療医学, 2.鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 システム血栓制御学, 3.鹿児島大学病院 救急集中治療部)

【背景】血管内皮細胞は血管内凝固を防ぐ役割を担っていると考えられているが、敗血症の際には、血管内皮細胞が障害されることに伴い、播種性血管内凝固が進行しやすい状況に至る。これに対し、本邦では抗凝固薬が使用されているが、血管内皮細胞障害に伴う凝固活性化、ならびに抗凝固薬が添加されることによる影響を評価するためのモデルは十分に確立されていない。【目的】血管内皮細胞障害に伴う凝固活性化を評価するためのin vitroモデルを構築し、抗凝固薬を添加した場合の影響を検討すること。【方法】ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養し、大腸菌由来エンドトキシン(LPS)で刺激したHUVEVCと無刺激のHUVECとを準備した。これらのHUVEC上に標準血漿、フィブリン重合阻害剤、塩化カルシウム、トロンビン蛍光基質SN-20を添加し、蛍光強度をトロンビン産生の指標として継時的に測定した。同様の検討を、抗凝固薬存在下でも実施した。蛍光強度の群間比較にはBonferoni法を用い、P値が0.05未満のものを統計学的に有意な差と判定した。【結果】無刺激の正常HUVEC上では、標準血漿中でのトロンビン産生をほとんど認めなかったが、LPSで刺激したHUVEC上では継時的にトロンビン産生が増加した(無刺激 vs LPS刺激, P <0.01)。同様の検討を遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)存在下で実施したところ、LPSで刺激したHUVEC上であっても、トロンビン産生が初期から有意に抑制された(抗凝固薬なし vs rTM, P< 0.01)。【考察】正常HUVECは凝固反応を抑制していると考えられたが、LPSで刺激したHUVEC上では凝固反応が進行した。この機序として、血管内皮細胞膜表面へのホスファチジルセリンの露出や、組織因子発現などが関与していると考えられる。今回構築した、血管内皮細胞障害に伴う凝固活性化を評価するためのin vitroモデルを応用することにより、アンチトロンビン製剤、ヘパリン製剤、rTM製剤などの効果発現の違いをin vitroで比較検討することが可能と考えられる。