[O43-1] アモキサピン中毒による痙攣重積発作により重度のアシドーシス(pH 6.499)を呈するも,救命できた一症例
【背景】第二世代三環系抗うつ薬であるアモキサピンは,過量服用によって重篤な中枢神経毒性をきたすことが知られており,死亡例も散見される。今回われわれは,アモキサピン中毒による痙攣重積発作により,重度のアシドーシス(pH 6.499)を呈するも,救命できた症例を経験したため報告する。【臨床経過】患者は51歳女性,コントロール不良のうつ病で精神科に通院していた。精神状態悪化のため,アモキサピン1500mgを服用し,約3時間後に痙攣重積状態で当院救命救急センターへ搬送された。来院時の動脈血液ガス分析では,pH 6.499, PaCO2 208mmHg, PaO2 274mmHg, HCO3- 15.2mmol/L, Lac 24mmol/Lと著しい混合性アシドーシスを呈していた。痙攣はミダゾラムに抵抗性であり,プロポフォール100mgで鎮痙が得られた。気管挿管,活性炭投与を施行し,ICUに収容した。入院後はプロポフォール,ミダゾラム持続静注で痙攣の再発を予防し,QRS延長も認めたため血液アルカリ化を実施した。来院時のアモキサピン血中濃度は,3250ng/mLと異常高値であったが,第4病日には120ng/mLまで低下した。しかし,鎮静薬中止後も意識障害が遷延した。持続脳波モニタリングでは痙攣波は認めず、入院時の頭部CTでは脳浮腫を認めたが,第4病日の頭部MRIでは脳浮腫が軽減し,その他の異常所見も見られなかった。意識障害遷延のため,第11病日に気管切開を実施し、第13病日にICUを退室した。その後は、リハビリテーションを行いながら緩やかに意識状態が改善し、第35病日の精神科病院転院時には,自力歩行や,簡単な意思疎通が可能となった。画像上の異常所見はないものの、痙攣重積状態もしくは搬送前の低酸素による神経学的後遺症と思われた。【結論】過去の報告例に比して、本症例のアシドーシスは特筆すべきものであり、救命できたものの後遺障害が残存した。アモキサピン中毒では、致死的かつ治療抵抗性の痙攣重積発作を起こしうることを改めて認識すべきである。