[O44-4] アミオダロンによる急性肝不全にNアセチルシステイン・高用量血漿交換併用が著効した1例
アミオダロンの急性期使用は比較的副作用が少なく、上室性・心室性の様々な不整脈に用いられる。アミオダロンの長期投与に伴う慢性肝障害の副作用はよく知られているが、アミオダロン静注による意識障害および出血傾向を伴う急性肝障害・肝不全については不明な点が多い。病態として、アミオダロンによる過敏反応、アミオダロン静注溶媒(ポリソルベート80)毒性、徐脈による循環不全からの組織低灌流の可能性が指摘されている。 今回、アミオダロン内服中で再度心房細動発症しアミオダロン静注を開始して24時間以内に肝機能障害、意識障害、凝固異常、急性腎傷害を発症し、人工呼吸器管理、急性血液浄化療法および高用量単純血漿交換、NAC投与により救命できたケースを経験した。症例報告とともにアミオダロンによる急性肝障害・肝不全について文献を含めて考察する。 症例は73歳男性。ADL自立。VF・心停止後、陳旧性心筋梗塞、低心機能・慢性心不全、発作性心房細動、慢性腎臓病、肺気腫、高血圧、糖尿病、脂質異常症の既往あり。VFに対してアミオダロン100mg内服中。肺炎、心不全、慢性腎臓病急性増悪で入院加療となり、抗菌薬・酸素投与で治療開始。全身状態改善傾向であったが入院4日目に心房細動頻脈発作となりアミオダロン50mg/時で6時間、その後25mg/時持続静注を行った。5病日18時間投与後に血圧維持可能であるが50台の徐脈となり軽度意識障害と肝・腎機能の急激な増悪、代謝性アシドーシスを認めた(AST10041、ALT3616、LDH10592、INR8.55、Cre2.11、pH7.38、HCO3-12.6、乳酸57mg/dL)。低心機能は以前と同様であった。中止10時間後も改善傾向なく、アミオダロンによる急性肝障害・肝不全疑いで集学的治療目的にICU入室。予防的に一時的ペーシングを行い強心薬ドブタミン、血管収縮薬ノルアドレナリン使用した。また軽度意識障害あり、挿管・人工呼吸器管理を行い、急性腎傷害および急性肝障害・肝不全に対して急性血液浄化療法CRRT:CVVHおよび高用量単純血漿交換(FFP=10%kgIBW使用)3日間施行と経鼻胃管よりNAC投与を行った。2、3病日で血行動態安定し、5病日に血液浄化療法離脱し、9病日にICU退室となった。アミオダロン静注による急性肝障害・肝不全に対して、投与中断とともにNAC投与と高用量単純血漿交換が有効である可能性がある。