[O44-5] 高齢者のアシクロビル脳症に対し血液浄化療法の施行の有無により血中濃度の差異を生じた二例
【背景】高齢者の帯状疱疹に対するアシクロビルの投与の機会は増加している。今回は帯状疱疹に対してアシクロビルが処方され、その後意識障害をきたした症例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は88歳女性。不穏・異常行動を主訴に当院に救急搬送となった。来院5か月前の血液検査では,血清Cre0.71mg/dl であった。来院3日前に左下腿から臀部にかけての疼痛を伴う皮疹が出現した近医を受診し、帯状疱疹が疑われたためバラシクロビル3000mg/日が処方され内服開始となった。内服開始後徘徊・移動困難が出現し、JapanComaScaleII-20程度の意識障害が出現したため精査目的に入院とした。来院時、血清Cre 3.4mg/ dl(eGFR 10.4ml/ml/1.73m2)と腎機能障害の進展を認め、頭部MRIや髄液検査では意識障害の原因となる有意な所見を認めなかった。中枢神経症状や内服歴から、バラシクロビルによるアシクロビル脳症を発症したと考え、血液透析を導入したところ速やかに意識障害は改善した。また、アシクロビル血中濃度もすみやかに低下した。他方の症例は82歳女性。施設職員がろれつが回っていないことに気づいて救急搬送された。来院4日前の血液検査ではCre0.69mg /dlであった。同日より帯状疱疹に対してアシクロビル3000mg/日が処方され内服開始されていた。来院時はJapanComaScaleI-1であり経過観察目的に入院とした。来院時、血清Cre 2.4mg/ dl(eGFR 16.3ml/ml/1.73m2)と低下していた。家人は侵襲的な加療を希望されず点滴のみを行ったところ、当日と翌日のアシクロビル血中濃度は低下を認めたがその変化は緩やかであった。翌日には会話可能となったため退院とした。【結論】アシクロビルを高齢者に投与する際には十分な注意が必要である。本発表では文献的考察を加えて報告する。