第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中毒

[O46] 一般演題・口演46
中毒04

2019年3月1日(金) 11:20 〜 12:10 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:一二三 亨(財団法人聖路加国際病院救急部)

[O46-1] 急性期一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素療法の効果

中島 幹男1,2, 麻生 将太郎1, 松居 宏樹1, 康永 秀生1 (1.東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学, 2.杏林大学医学部救急医学)

【目的】一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素療法は, 既存の研究では死亡率を低下させる効果は示されていない。また, 重症例には行うように勧められているものの, 高齢者や軽症者についての効果は不明である。本研究は急性期一酸化炭素中毒に対する高気圧酸素療法の効果を明らかにし、さらにどのようなサブグループでも有効なのかを検証することを目的とした。【方法】厚労科研DPCデータベースを用いて2010年7月から2017年3月に一酸化炭素中毒で入院治療を受けた患者を対象とした。在院日数≦2日, 再入院患者, Burn Index(BI)≧10の患者は除外した。高気圧酸素療法群は入院2日以内に少なくとも1回実施しているものとし, 非実施群を対照とした。1:1傾向スコアマッチングを用いて, 一次アウトカムを院内死亡, 二次アウトカムを自宅退院, 退院時の意識レベルが清明でない(Japan Coma Scale≠0), 退院時のADLが完全自立でない(Barthel Index ≠ 100)として, 両群のリスク差を比較した。高齢者(65歳以上)と軽症例(人工呼吸管理していない症例)おいてサブグループ解析を行った。【結果】解析対象者は3621名(高圧酸素療法群 2204人, 対照群 4357人)であった。傾向スコアで高圧酸素療法群 2195人のペアがマッチした。マッチング後の両群の背景・交絡因子のバランスは良好であり, 院内死亡は高気圧酸素療法群で有意に低かった(0.8% vs 1.5%; リスク差 0.7%; NNT 143; p=0.03)。自宅退院は有意に高気圧酸素療法群で多かった(84.5% vs 82.1%; リスク差 2.4%; p=0.03)。退院時の意識レベルが清明でない患者(6.8% vs 9.8%; リスク差 3.0%; NNT 33; p<0.01), 退院時のADLが完全自立でない患者は有意に高気圧酸素療法群で少なかった(17.7% vs 22.9%; リスク差 5.2%; NNT 19; p<0.01)。サブグループ解析では高齢者, 軽症例ともに死亡率の有意差は認めなかったものの, 退院時の意識レベルが清明でない患者, ADLが完全自立でない患者は有意に高気圧酸素療法群で少なかった。【結語】高気圧酸素療法は死亡率の低下効果を認めた。高齢者や軽症例では死亡率の差は認めなかったものの, 退院時の意識レベルやADLは有意に改善した。一酸化炭素中毒の急性期における高気圧酸素療法は, 従来よい適応と考えられていた若年者, 重症例だけでなく, 全患者層で有効な可能性がある。