第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

蘇生 研究

[O48] 一般演題・口演48
蘇生 研究01

2019年3月1日(金) 15:00 〜 16:00 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:大嶋 清宏(群馬大学大学院 医学系研究科 救急医学)

[O48-2] 【優秀演題(口演)】院外心停止に対する経皮的心肺補助装置を用いた心肺蘇生法における導入時合併症と生命予後

丸橋 孝昭1, 勝田 賢2, 栗原 祐太朗1, 大井 真里奈1, 服部 潤1, 片岡 祐一1, 浅利 靖1 (1.北里大学 医学部 救命救急医学, 2.藤田保健衛生大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座)

【背景】院外心停止に対する経皮的心肺補助装置(以下ECMO;Extracorporeal membrane Oxygenation)を用いた心肺蘇生法(以下ECPR;Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)は、特に心原性心停止に対して生存率を向上させた。一方、ECMOは導入に際して、大口径のカニューレ挿入が必要である。心停止下という特殊な状況において、カニューレ挿入に伴う合併症は少なくないが、合併症発生による転帰への影響は、これまで十分に検討されていない。【目的】ECPRにおける合併症の頻度やその種類を検証するとともに、合併症の有無が転帰に与える影響を明らかにする。【方法】単施設の救命救急センターにおいて、2010年1月から2015年12月までの5年間、ECPRが行われた院外心停止例を対象とした。まず、Veno-Venous、Veno-Arterialを問わず、ECMOが使用された全症例を院内データベースより抽出し、院外心停止以外を除外することで対象症例を得た。診療録および画像データから、ECPRにおける送脱血管の挿入に関する合併症を後方視的に集計した。合併症の有無により、対象症例を2群に分けそれぞれ比較した。主要評価項目は30日生存率とし、副次評価項目として合併症の頻度とその種類、病院到着からECMO導入までに要した時間、輸血量とした。【結果】ECMOは全162例、そのうち対象症例は87例あった。導入時合併症を認めたのは51例(58.6%)であった。合併症の内訳は、穿刺部血腫が最も多く29件、後腹膜血腫19件、送血、脱血管の誤挿入11件、血管損傷7件、送脱血カニューレの迷入6件、腹腔内出血3件、腹直筋血腫1件であった(重複あり)。合併症の多くは圧迫止血や輸血により対応可能であったが、外科的止血術を要した症例は10例あり、血管内治療2件、開腹止血術4件、血管縫合術9件(重複あり)が施行された。主要評価項目である合併症の有無による30日生存率は、5.9% vs 22.2%(P=0.02)と、合併症が発生した群で有意に低値となった。ECMO導入までに要した時間と輸血量は2群間に有意差はなかった。ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析においても、合併症の発生は、30日生存率に影響を与える独立因子であった。(オッズ比5.0、95%信頼区間1.24-20.10)【結語】ECPRにおける導入時合併症は、生命予後を悪化させる要因となる可能性がある。