第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

新生児・小児 症例

[O55] 一般演題・口演55
新生児・小児 症例02

2019年3月1日(金) 11:10 〜 11:50 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:松井 彦郎(東京大学医学部附属病院小児科)

[O55-2] 新生児期にペースメーカー治療を行った先天性完全房室ブロックの1例

岩崎 美佳1, 枡岡 歩1, 細田 隆介1, 保土田 健太郎1, 連 翔太2, 住友 直方2, 鈴木 孝明1 (1.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科, 2.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

【背景】先天性完全房室ブロック(CCAVB)に対する出生後のペースメーカー治療については、一時的な心外膜リードによる体外式ペーシングや経食道・経胸壁ペーシング、内科的管理後に待機的に恒久式ペースメーカー挿入を行うなど、様々な報告がある。今回我々は、出生直前にCAVBと診断され、出生後早期よりペースメーカー治療を必要とした症例を経験したので報告する。【症例】生後1ヶ月の男児。自然妊娠で近医にて経過観察されおり、在胎38週までの妊婦健診では特に異常を指摘されていなかったが、在胎40週0日 Cardiotocogramにて胎児心音を拾えず、胎児エコーにて胎児徐脈(HR70bpm)・心拡大・心嚢液貯留を認め、前医紹介、胎児心不全の診断にて緊急帝王切開の方針となった。胎児心エコーでは、心房Rate 140bpm、心室Rate 70-75bpmであり、房室ブロックが認められた。出生時体重3466g。出生後、CAVBを認め(HR 60)、精査加療目的に当院搬送。出産時の採血にて初めて母体抗SS-A抗体陽性が判明、抗SS-A抗体によるCCAVBに伴う心不全と診断した。CAVB(HR 60bpm)であっても活気はあり、呼吸努力は認めなかった。CCAVBに対する治療として、イソプロテレノール(ISP)・γglobulin・ステロイドパルスを開始したが改善なく、両心不全の増悪を認めた。ISP増量するも効果なく、循環不全を呈したため、同日 緊急体外式ペースメーカー留置術(DDD;胸骨正中小切開下に一時的ペーシングワイヤーを縫着)を施行した。術後はDDD pacingを行う事で、速やかに循環の安定が得られた。体重増加を待ち、生後1ヶ月時(3864g)に恒久式ペースメーカー挿入(DDD;左室心尖部と右心房に心筋リードを縫着)を行った。術後経過は良好であり、抗心不全療法を継続中である。【考察】CCAVBに対して、一時的な心外膜リードによる体外式ペースメーカー治療(DDD)により全身状態の改善・良好な体重増加を得られ、安全に恒久式ペースメーカー植込みを行うことができた症例を経験した。先天性完全房室ブロックの予後は、新生児・乳児期からの人工ペースメーカー植込みが広く行われるようになり予後は大きく改善したが、遠隔期に拡張型心筋症を続発するとの報告があり、長期間の観察を行う必要がある。