第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

中枢神経

[O59] 一般演題・口演59
中枢神経02

Fri. Mar 1, 2019 4:30 PM - 5:10 PM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:林田 敬(慶應義塾大学医学部救急医学)

[O59-1] 開心術手技の影響が考えられた急性硬膜下血腫の2症例―発症メカニズムについての生体力学的検証―

佐久間 絢1,2, 進藤 俊介1, 小松崎 崇1, 玉井 謙次1, 金井 理一郎1, 木村 慎一1, 佐藤 智行3, 黒崎 久仁彦4, 落合 亮一2, 高橋 宏行1 (1.済生会横浜市東部病院 集中治療科, 2.東邦大学医療センター大森病院 麻酔科, 3.済生会横浜市東部病院 麻酔科, 4.東邦大学 医学部 法医学講座)

開心術時の急性硬膜下血種は非常にまれである。過去の報告では、術前の抗血小板薬・抗凝固薬内服、術中のヘパリン化による凝固能異常を主因と論じているものが多く、手術手技を原因とする報告はない。
今回我々は、術前に頭部外傷の病歴がない患者において、開心術時に急性硬膜下血種を発症した2症例を経験した。
1症例目は、大動脈弁狭窄症、不安定狭心症に対して大動脈弁置換術、冠動脈バイパス術を施行した80歳女性。慢性心房細動のために内服していたワーファリンを手術4日前から休薬し、ヘパリン化を行ったが、原因不明の血小板減少のために手術2日前に投与を中止した。術後、鎮静下管理であったため、神経学的所見の評価が困難であった。術後2日目に左下肢の病的反射と左側の半側空間無視が出現し、頭部CTでは急性硬膜下血腫および脳梗塞を認めた。同日、緊急開頭血腫除去術+外減圧術を施行し、その後の経過は良好であった。左片麻痺に対するリハビリテーションを目的に術後21日目に転院となった。
2症例目は脳梗塞の既往がある79歳男性。大動脈基部拡張症に対してBentall手術を施行したが、人工心肺からの離脱時に急激なBIS値の低下、及び両側瞳孔散大を認めた。術直後に頭部CTで急性硬膜下血腫と脳浮腫による正中偏移を認めた。緊急で開頭血腫除去術+外減圧術を施行した。ICU入室後も瞳孔散大の所見は変わらず、鎮静薬投与を中止後も意識レベルの改善を認めなかった。また、多尿、高ナトリウム血症を呈し、尿崩症が示唆された。翌日の頭部CTでは、脳浮腫の増悪と鈎ヘルニアによる脳ヘルニアの状態に至っており、術後4日目に死亡した。
周術期の出血リスクは、1症例目が2症例目より高いと考えられるが、2症例目は死亡へ至っており、急性硬膜下血種の原因としては、前述した凝固能異常のみでは説明できない素因があると考えた。
我々の施設では人工心肺離脱時に開胸器を把持して体幹を激しく揺することで心腔内の気泡除去を行っている。この手術手技により体幹から頭部へ振幅運動が伝導したことにより、『揺さぶられっ子症候群』に類似した機序で頭蓋内の架橋静脈へのせん断力が働いたと推察した。発症メカニズムについて生体力学的考察を交えて検証する。