第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

リハビリテーション

[O64] 一般演題・口演64
リハビリテーション01

2019年3月1日(金) 09:15 〜 10:05 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:橋本 圭司(出雲徳洲会病院 麻酔科)

[O64-4] ICU患者における自宅退院の可否の予測指標としてのFunctional Status Score for the ICUの有用性

相川 駿1, 松嶋 真哉1, 横山 仁志2 (1.聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 リハビリテーション部, 2.聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーション部)

【背景】近年, 集中治療医学の進歩による生存率の向上に伴い,ICU退室後に生じる身体的,心理的な問題であるPost Intensive Care Syndrome(以下,PICS)が着目されている.PICS患者では身体機能障害,認知機能障害,メンタルヘルスにて自宅退院が困難になることが少なくない.そのため,入院後早期より自宅退院の可否を予測する事は,入院期間を短縮させる可能性があり有益である.ICU患者向けに作成された基本動作能力の評価法であるFSS-ICUは患者の転帰を反映する可能性が報告されているが,自宅退院の可否を予測するためのFSS-ICUの目安を含む詳細については明らかではない.
【目的】ICU患者のFSS-ICUと自宅退院の可否との関連性を検討し,その目安を明らかにする事である.
【方法】研究デザインは,後ろ向きの観察研究とした.対象は,2017年4月から2018年5月までに,自宅から当院のICUに入室し,48時間以上のICU管理を要した連続573例の成人とした.なお,ADL低下を来すような急性の中枢神経および運動器疾患例,退院までの死亡例は対象から除外した.主要評価項目は,自宅退院の可否とし,FSS-ICUはICU退室時のFSS-ICUを採用した.統計解析は,自宅退院の可否を従属変数,FSS-ICUと単変量分析にて有意差を認めた患者特性の項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った.次に,FSS-ICUの自宅退院の可否に対するReceiver Operating Characteristic(以下,ROC)曲線を作成し,曲線下面積とカットオフ値を算出した.
【結果】解析対象は,除外基準を除いた154例となり自宅退院は117例(77.0%)であった.患者特性は年齢,APACHE2スコア,挿管有りの割合,FSS-ICUはそれぞれ75.5(64.8-82.0)歳,20.0(14.0-26.0),56例(36.4%),30点(24.0-33.0)であった.また,疾患の割合は,循環器疾患77例(50.0%),敗血症22例(14.3%),呼吸器疾患19例(12.3%)で順に多かった.ロジスティック回帰分析の結果では,FSS-ICUは自宅退院の可否の有意な予測因子であった(オッズ比0.826, 95%信頼区間:0.754-0.905).FSS-ICUのROC曲線下面積は0.827(95%信頼区間:0.750-0.905)であり,自宅退院の可否を予測するカットオフ値は26点で感度は0.784,特異度は0.752であった.
【結論】ICU患者のICU退室時のFSS-ICUは自宅退院の可否を予測する強い予測因子であり,自宅退院の可否を予測するカットオフ値は26点であった.したがって,ICU患者の速やかな自宅退院の可否の予測のためのFSS-ICUの有用性が示された.